混迷の東京五輪「選手をサポートする企業」の本音 企業がスポーツ選手を支援する長期的な狙い
東副本部長は話を続ける。
「選手引退後の進路を見ると、①所属部署の仕事に専念し、職場で活躍する者、②強化運動部で指導者になったり、協会などで競技に携わる者、③スポーツのスキルを生かす業務に携わる者……といった区分けができます。③の中には、パワーに秀でるラグビー部OBが、豊田社長が個人オーナーを務めるモータースポーツチーム・ルーキーレーシングにメカニック入りし、タイヤ交換を担っている例もあります。
彼らの適性を把握し、能力を生かせる職場で働いてもらえれば、会社もありがたい。そのために、現役中から個人面談を繰り返して、進むべき方向性を一緒に模索する形を近年は特に強化しています。社内にはパソコンや外国語などのスキルを身に付ける環境もあるので、それを活用する選手もいます。
いずれにしても、彼らが引退後のビジョンもしっかりと描けるような環境があれば、現役中からより安心して競技に取り組める。それが日本の競技力向上にもつながり、スポーツが活性化されると理想的だと考えます」
いちごがウエイトリフティング部を作った経緯
アスリートの持つ能力を会社に還元しようという姿勢は、総合不動産業大手・いちご株式会社にも通じる部分。同社は2012年ロンドン・2016年リオデジャネイロ両五輪で女子ウエイトリフティングの連続メダリストとなった三宅宏実の在籍先として知られる。加えて言うと、2019年からJリーグのトップパートナーを務めており、スポーツに意欲的に取り組んでいる会社の1つと言っていい。
「われわれの場合、選手はすべて社員雇用。現役中はスポーツ活動を最大限支援し、引退後は仲間として一緒に働く前提で入社してもらいます。スポンサーという枠組みでは捉えていません」と強調するのは、ブランドコミュニケーション部の木村真紀氏だ。
2008年に三宅宏実を採用し、ウエイトリフティング部を作るきっかけとなったのは、三宅義行監督と接点を持つ人間が社内にいたことだという。
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