「狭く古い家」にしたら手に入った「驚くべきもの」 住めば住むほどにジーンと幸せを噛み締める

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となればですね、これはもうある種の運命というか、神の思し召しというか、私は偶然エライ体験をしてしまったものとして、この結果を「ウッシッシうまいこといったぜ!」「これで我が老後は何の不安もなし!」などと一人で喜んでいるだけではバチが当たりそうな気もしてくる。

状況は変えられなくても、自分は変えられる

というわけですっかり前置きが長くなったが、あの引っ越しの日からいったい何が起きたのか、順を追って書いていこうと思う。

引っ越し当日、小さすぎる部屋でポツンと一人、あまりの環境の激変ぶりに我が人生の先行きに大いなる不安を感じ、眠れなくなったことは前回書いた。

今にして思えば、結局のところ私は「悔しかった」のだ。

いやね、会社を辞めて自由な時間を得ようと思ったのは自分の意思以外の何物でもなく、その代償としてこうなることは百も承知だったはずで、今更悔しいも何もない。

それでもやはり、その気持ちはどうすることもできなかった。人とはつくづく弱いものである。定職もない身で都内に家を借りられただけで十分にありがたいと思わなきゃいけないのに、それより何より「失ったもの」の方ばかりに目がいってしまうのだ。

ピカピカの建物。

オートロックと分厚い壁でプライバシーの守られた静かな環境。

服だの化粧品だの本だの食器だの調理器具だの、収納ゼロの家へと引っ越すにあたり手放さざるをえなかった愛する多くのものたち。

そして何よりも、自分はリッチな広い家で暮らすことができるのだという優越感。

……こうして書いてみると我ながら実に小さな人間であることに呆れるし恥ずかしいことこの上ないが、残念ながら本当のことである。

つまりはですね、私の敵は何よりもこのちっぽけな私自身なのであった。

会社を辞めた以上、泣いても笑っても、もう給料はもらえないという事実を変えることはできない。ゆえに、その圧倒的現実がもたらす状況を「悔しい」などと思っていては、私は一生悔しさとともに生きることになる。

次ページ考え方を変えてしまえば良い
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