調査委員会の結論に対し、サイエンスコミュニティから一斉に非難の集中砲火が浴びせられている。日本分子生物学会はホームページに理事たちのコメントを掲載した。その内容は、きわめて厳しいものだ。「早稲田大学の結論は非常識であり犯罪の容認と同等」(上村匡京都大学教授)、「本学位論文が、いままでに取り下げられた学位論文の中でも最悪のレベルに位置することは明白」(渡邊嘉典東京大学教授)。
「早稲田の学位だけでなく日本の博士の価値が暴落する」と日本のサイエンス全体に対する信用の低下を懸念する声や、「早稲田出身のポスドクは、採用しない」と公言する研究室主宰者すら現れた。
なぜ、学位取り消しに該当しないとの結論なのか。
異例の調査委員会
科学論文の調査であるのに、調査委員長が弁護士であるということ自体が珍しい。早稲田大学に先立つ、理研のSTAP論文に関する不正調査では、当初、調査委員長となった理研の科学者が途中で降板したために、便宜的に弁護士が調査委員長になったにすぎない。
また、調査委員長を務めた小林英明弁護士以外は、全員匿名である点も、他の不正調査ではあまり例がない。東京大学、国立大学、早稲田大学という所属で医学博士という身分の3人と、早稲田大学の政治学博士1人、計4人の調査委員の氏名は非公表で、コメントもない。7月17日の会見の登壇者も、小林弁護士とその補佐という若い弁護士2人の計3人だった。
博士号は国際的にも通用する公的な「資格」であり、専門的な議論をするための最低限の常識を備えているという証しだ。不正を認定するに当たっては、その資格がある人が調査を行なっていることを示す必要がある。身分の提示だけでは十分とは言えない。早稲田大学広報部によれば「もともと匿名が条件で調査委員を引受けていただいた経緯があった」という。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら