ブラード総裁ら2022年の利上げ開始を想定しているタカ派メンバーは、早々にテーパリング(資産購入金額の減少)を開始して、2022年にスムーズな利上げに移れるよう主張するかもしれない。FOMCメンバーで多くなっているタカ派シナリオが実現すれば、「FRBによる金融緩和徹底」の前提が変わるので、株式市場にとっては大きな変化である。
週明けの6月22日以降は、パウエル議長らが利上げ時期が遠いことに改めて言及した。アメリカの株式市場は大きく反発して、24日にS&P500は最高値を更新、一時大きく低下していた長期金利も下げ止まった。タカ派メンバーが描くシナリオと、FOMC主流派の見方には差があることを、金融市場は冷静に認識したのかもしれない。
それでも今回のFOMCをきっかけに、夏場にテーパリングの議論に着手するとみられるFRBの姿勢への株式市場の疑念は、簡単には払拭されないだろう。最高値を更新したアメリカの株式市場に対しては、目先は過度に楽観視しないほうがいいと見ている。
なぜ「FRBの早期利上げの実現性は低い」と見るのか
ただ、筆者はFRBの早期利上げが実現する可能性は低いと見ている。1つには、FOMCメンバーの主流派は2023年以降の利上げ開始を想定している。雇用回復が緩やかで完全雇用に相当距離がある状況では、現在のタカ派メンバーが主張するように、テーパリング開始を急ぐ蓋然性は高くない。
2つ目には、FOMCメンバーが想定する2022年、2023年までの好調な経済成長と、順調な失業率低下の想定が実現しない可能性があることである。具体的には、FOMCメンバーは、2023年には失業率の約3.5%までの改善を予想しているが、こうした完全雇用となれば2023年の利上げ開始が正当化されるということだろう。
ただ、実際には、財政政策による成長押上げ効果が減衰していくとみられる2022年央以降は、経済成長率は減速して、FOMCメンバーが想定するような失業率低下は実現しないと筆者は予想している。
つまり、株式市場が恐れ始めたタカ派メンバーの、2022年への利上げ前倒しが正当化されるような、アメリカ経済の過熱、そして持続的なインフレ上昇は実現しないだろう。いずれ、株式市場を揺るがしているタカ派メンバーの想定が後ズレするとともに、2023年後半以降のFRBの利上げ開始が想定される展開を筆者は予想している。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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