4月22~23日に気候変動に関するサミットがアメリカ主催で開催され、約40カ国の指導者が参加した。パリ協定が掲げる平均気温上昇を抑制するための温暖化ガス削減に向けて政策転換を行っているジョー・バイデン政権は、サミットにおいて排出量を2005年対比で約50%削減するとの目標を掲げた。
先んじて温暖化問題に熱心だったヨーロッパ諸国に、バイデン政権が再び寄り添った格好だが、日本もアメリカに追随した。菅義偉政権は発足当初から「脱炭素政策」を重視していたが、今回のサミットでは、2013年対比で約46%と削減目標を従来から引き上げた。
温暖化ガスの最大の排出国である中国は、2020年9月の国連総会において習近平国家主席が、2030年までにCO2排出量の増加を止めることに加えて2060年までのカーボンニュートラルを目指す、と発言している。ただし今回のサミットでは、2030年までの明確な削減目標を改めて示すには至らなかった。
筆者は気候変動問題について十分な知見を持っているわけではない。だが、温暖化ガスが近年の急激な気温上昇を招き、世界の環境に大きな影響を及ぼしている問題に関して科学的な知見は積み重ねられている、と考える。このため、気温上昇に歯止めをかけることは、環境変化がもたらす負の外部性を低下させるため、経済的に合理性がある政策対応になる。
日本は排出削減にどの程度貢献できるのか
また、政権交代によってアメリカの姿勢が転換して大きな潮流ができたので、それに日本が乗り遅れることは、国際政治の世界ではありえない選択肢だろう。むしろ、温暖化問題に関するルール策定に積極的に関与して存在感を示すことが、日本の国益を高める一つの手段になる。
一方で、今回の温暖化ガス削減目標の引き上げについて、その妥当性について客観的な論拠を示すことは実際には難しいと思われる。アメリカやヨーロッパとの政治的な距離感を考えて、日本の削減目標の引き上げが、政治的に決まった側面が大きいのだろう。
そもそも、世界の温暖化ガスを本当に削減するためには、日本よりも格段に排出量が大きいアメリカ、中国だけではなく、インド、ロシアなどの排出量がより大きい新興国の協力を得る必要がある。日本は世界第3位の経済大国ではあるが、国内の削減取り組みによって、世界的な排出削減に対する貢献はかなり限られる。
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