「脱炭素」は一歩間違えれば「ムリゲー」になる

日本の「国際競争力復活」に必要なことは何か

米中覇権争いの構図が続き、バイデン政権が中国への政治圧力を強めるなか、温暖化ガス削減は重要な「政治ツール」になるだろう。今後の米中の対立あるいは折衝の場面で、日本がうまく間に入って立ち振る舞えるか。外交行動を通じて日本が中国に働きかけることが、世界全体の温暖化ガス排出抑制のために、国内の排出削減よりも大きな貢献ができる日本としての役割ではないかと筆者は考えている。

今回、2030年の中間目標引き上げに際して、各国は再エネ利用の拡大などで、実現可能性が見込める数字を積み上げた試算が参照されたとみられる。2050年までの脱炭素実現のためには、それらの前提を超える複数の技術革新による課題解決が必要だろう。各国政府、科学技術者、民間企業がこれを目指す意義は大きいとしても、その実現可能性は専門家にもわからないのが実情ではないか。

つまり、2050年という将来目標は、不確実性が高い技術革新の進展に依存するのだから、将来的に大きく見直される可能性もある。そして、2030年の中間目標の実現性を取り巻く環境も今後大きく変わりうるのだから、今回アメリカや日本が引き上げた削減目標について、あれこれ論評することは建設的ではないだろうし、政治的なメッセージと位置付けるべきだろう。

削減目標を巡る政治家の「無責任な発言」

日本では、小泉進次郎環境大臣が46%の温暖化ガス削減目標に関して「おぼろげながらも浮かんできたんです、46という数字が」と発言して、ネットの世界で炎上するなど話題になっている。上記のようなさまざまな事情を踏まえて、政治的に決まった今回の削減目標を正しく国民に伝えることは、政治家の資質や能力をはかる一つの試験紙だろう。そして重要な場で、多くの国民を呆れさせるような無責任な発言が聞かれた、ということだと筆者は評価している。

2050年までの脱炭素実現を積極的に目指すとしても、経済全体の成長率や国民の経済厚生を上昇させる政策対応が、より重要である。政治家が官僚組織の提言を鵜呑みにして野心的とされる温暖化ガス削減目標が一人歩きすれば、日本経済をさらに停滞させるだけである。

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