前回のコラム「株価がかなり不安定になっている本当の理由」(3月5日配信)では、世界の株式市場が長期金利上昇によって不安定になっていることを解説した。
アメリカの長期金利(10年国債)は年初の1%前後から、3月には1.5%を超える水準まで上昇して、依然として日々大きく上下している。同国経済が2021年に戦後最高に匹敵する高成長になることを目ざとく織り込んだ株式市場は、大統領選挙の後から上昇が続いていた。それを債券市場が遅れて認識したことで、2021年になってから長期金利が上昇していると述べた。
アメリカの長期金利は今までが低すぎただけ
債券市場の多くの投資家の間では「FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和が長期化するので低金利環境が続く」との期待が強固だったいっぽうで、経済成長やインフレ率の上昇が軽視されていたのだろう。
ところが、2月19日のコラム「アメリカで『ひどいインフレが起きる』は本当か」で筆者がいち早く紹介したように、ローレンス・サマーズ ハーバード大教授などの経済学者が、財政政策が高いインフレをもたらすリスクに言及した。経済学の重鎮の発言をきっかけに、経済成長加速とインフレ率に関して今後起こりうるシナリオについて債券市場が幅広に考え始めたのだろう。
2020年後半からの経済復調によって、製造業の生産活動が急ピッチで回復して、昨年末には、すでに生産数量などはコロナ禍前の水準まで戻っていた。こうしたなか、半導体不足など局所的な需給逼迫の現象が増えたため、昨年までほとんどなかった、債券市場における(漠然とした)インフレへの懸念が突如浮上した。
とはいえ、これまで起きたアメリカの長期金利の上昇は、同国経済を失速させる可能性は低いとみられる。財政政策の効果で、2021年には約6%の経済成長率となり、第2次世界大戦直後の復興期に匹敵する高成長となる可能性が高いと筆者は予想している。この経済成長率を踏まえると、1%前後の長期金利水準はかなり低かった。
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