実際、2月は長期金利上昇におびえて株式市場は極めて神経質に動いたため、ナスダック指数は2月半ばの高値から一時10%下落するなど、グロース銘柄が総じて崩れた。だが長期金利がそもそも低すぎたという筆者と同様の見方が徐々に株式市場にも広がったとみられ、3月中旬になると長期金利上昇が続くなかで、グロース株の下落に歯止めがかかりナスダック指数は最高値から約5%低い水準まで戻している(3月12日現在)。
仮に、ジェローム・パウエル議長が率いるFRBの金融緩和が十分ではない場合、長期金利の上昇が住宅市場の減速を招く可能性がある。あるいは株価や社債価格を下落させれば、金融環境全体が引き締め的な状況となり、肝心の経済成長にブレーキをかけることになる。
FRBは債券市場参加者の一部が期待しているとみられる、長期金利上昇を抑制する対応に踏み出していない。むしろ、これまでの長期金利の上昇について、FRBは低下していたインフレ期待が正常な領域に戻ったと前向きに考えていると筆者は見ている。
カギを握るFRBの金融政策
実際には、長期金利の短期的な変動にどう対応するかより、FRBにとってより重要なことは、完全雇用を実現させかつ2%インフレ目標の上振れを積極的に容認する現行の政策フレームワークに強く関与することである。FRBのコミットメントが明確なため、経済成長を阻害する政策ミスをFRBは行わないとの信認が保たれていると筆者は評価している。
FOMC(連邦公開市場委員会)で示されたドットチャートでは「2023年まで2%程度のインフレ率が続いても利上げ開始には至らない」との主要メンバーの認識が示された。利上げに至るハードルは相当高い。FRBの金融政策が今後のアメリカ株高を支える構図は変わらない、と筆者は予想している。
FRBの金融政策に加えて、新型コロナへの対応策として発動された財政政策も、コロナ危機後からの1年間のアメリカを中心とした世界的な株高を牽引してきた。そして、コロナ危機直後の2020年3月末にトランプ前政権が発動した対策と同規模の財政政策を、ジョー・バイデン政権はアメリカ救済法として2021年早々に実現させた。これは、アメリカによる財政政策の最後のダメ押しと位置付けられるだろう。先述したとおり、この最後の一押しが、株高に加えて2021年の長期金利上昇とドル高をもたらした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら