「親米」「反米」ではアメリカの現実が見えない理由

転換期にある「リベラル・デモクラシー」の帝国

紆余曲折の末に新ワールドトレードセンターは建設されたが(写真:旅人/PIXTA)
日々報道されるバイデン政権の動向や米中対立の行方、それらに対応する日本の方針。こうした目の前の問題ももちろん重要だ。
しかし、大きな展望がなければ、目の前の問題にも一定の見通しはもてないだろう。であるからには長期的な視野で、しかもこれまでの親米か反米かといった枠組みとは異なる次元で、現在の「アメリカ」の混迷について考えることが求められているのではないか。
このたび藤本龍児氏が上梓した、「アメリカ」を大きな観点から見直す書、『「ポスト・アメリカニズム」の世紀──転換期のキリスト教文明』から、プロローグの一部を抜粋・編集して掲載する。

9・11テロの刻印

不幸なことに21世紀は、9・11テロとともに幕をあけた。そのように新世紀の始点をふりかえるのも、ことさらペシミスティックな見方とは言えないだろう。

同時多発テロは、3000人近い犠牲者と6000人を超える負傷者を出し、なかでもワールドトレードセンター(WTC)の犠牲者は2700人を超えた。テロの様子は、リアルタイムで世界中に報じられ、深刻な衝撃を与えた。しかも多くの映像が残され、折にふれて繰り返し放映されている。今後も幾度となく人びとの目に触れることだろう。9.11テロは世界に、消し去ることのできない印象を刻みこんだのである。

その刻印は、鮮明でありながら複層的であり、さまざまな形で影をおとしている。最先端の情報技術と圧倒的な軍事力をもったアメリカでさえ防ぎ切れない攻撃手段。現代を代表する建築物が、あっけなく崩れ落ちる光景。いずれも恐怖を覚えざるをえないものである。

9.11のような規模のテロはめったに起こらないにせよ、われわれの平和な日常にあっても、いつとは知れず、思わぬ形でそうした事態は起きるかもしれない。そういう印象を人々の意識の深層に刻みつけたのである。世界各地にひそむテロ集団との戦いを勇ましく宣言したブッシュ大統領も、「アメリカは、地球の裏側に集まる脅威に対してさえ、自身の脆弱性を感じた」と漏らしている(2002年10月7日のシンシナティにおける演説)。

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