倒産急増の観光業が「人ごと」ではすまない理由 コロナ後に勝ち残る地方観光地をつくる処方箋

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急速な需要低迷に直面している観光業の現場はどのような状況か……。

例えば従前、総来場者の30%前後が海外からのスキーヤーだった白馬エリアの2020〜2021年シーズンは、前年比45%減と想像どおり惨憺たるものでした。

この10年インバウンド・スキーヤーの取り込みでなんとか国内スキーヤーの減少をカバーしてきました。それがインバウンド市場の消滅により、国内若年層のスキー離れが着実に進んでいたことが露呈したシーズンになったといえます。

1990年代を境に縮小傾向が続いている国内スキー市場ですが、2010年頃まではスキー・スノーボードに行く意欲の減退(参加率の低下)によって市場が急縮小してきました。それが今後は、参加率の高かった10代~40代の人口そのものが減少することで市場が小さくなることが確実視されています。

(筆者提供)

一方、事業を営むうえで必須となる観光関連の施設の老朽化は年々進んでおり、更新に向けた投資が不可避なステージですが、この市況下、簡単な話ではありません。

新しい観光コンテンツの造成が遅れていることも大きな問題でしょう。一部では新しい魅力的な施設が作られ集客に成功するケースもありますが、総じて見れば昔のままの観光地が大半で、若者から見て「わざわざ旅行に行きたい」と思わせるコンテンツが不足しています。

観光地として魅力を失っていく地方

さまざまなテクノロジーの進化によりレジャーの多様化が急速に進み、都会に居ながらできる非日常の体験もどんどん充実しています。観光地の施設や体験内容が昔のまま、もしくはそれより劣化している現状では若者が今後さらに観光に出向かなくなるのも不思議ではありません。

観光・レクリエーション目的の国内宿泊旅行延べ人数は2013年の1.76 億人から、2040 年には1.49 億人程度まで減少すると見られています(国土交通政策研究所)。

各地の温泉街や高原リゾートなどでは廃墟化しゴーストタウンのようになった一角も出ており、その存在が観光地全体の魅力を大きく押し下げているところも多く見られます。手をこまねいていれば、こうした光景が今後急増するでしょう。

このような中長期的に見た国内需要の減少とインフラ老朽化に伴う観光地としての魅力低下は、コロナ禍関係なく観光業全般、特に地方では大きな課題として誰もが認識してきたはずですが、ギリギリになるまで危機感を持てなかった……現場の問題があったように思います。

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