倒産急増の観光業が「人ごと」ではすまない理由 コロナ後に勝ち残る地方観光地をつくる処方箋
個々の事業者も従前の踏襲ではなく、人口減やレジャー多様化などを前提に経営のあり方を変えなければなりません。これまで不稼働・低稼働だった季節や施設の掘り起こしやコスト構造の抜本的見直しなど、稼ぐ力を付け直すことが不可欠でしょう。
また、自治体などによるゾンビ的企業への救済策の見直しを進め、慢性的な供給過剰に起因した価格コントロール力の低さを回復することも必要です。こうしたことを実現するには、地方創生ファンドなど外部金融機関と地域金融機関が連携し、思い切った取り組みをバックアップすることが大事だと考えます。
観光地をきれいに保つため、廃墟となってしまった建物や廃業して使われなくなる建物を積極的に自然に戻し、景観を良化させるエリアとしての努力、いわば「きれいなダウンサイジング」も有効でしょう。
ただ解体は、それ自体ではキャッシュを生む投資ではないため誰が費用を負担するのかが問題となり、地元企業などが率先してやるのはなかなか難しいかもしれません。「誰かが最後綺麗にしてくれるので自分ではやらない」というモラルハザードを生みがちですが、そう言っている間にも人口減少社会がやってきて遅きに失する可能性があります。
これには、2015年に制定された“空き家特措法”のスキームが活用できます。倒壊しそうなほど老朽化しているなど、外部不経済(経済活動の外側で発生する不利益が、個人や企業に悪い効果を与えること)が発生している建物を、自治体が所有者に代わり解体、適正に管理する。
ほかにも、2020年度第2次補正で予算化された「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」で措置された「空き家撤去に対する補助」が活用できます。
こうして観光地としての「稼ぐ力」を向上させながら、個々の観光事業者がそのキャッシュフローを原資に、若い世代も「旅行したい」と思うようなコンテンツ開発に必要な投資を着実に実行していくのです。
若い世代にも響く観光資源掘り起こし
この際、かつての補助金活用のケースでよく見られたような、どこにでもあるハコモノ(温泉施設や直売所など)を新たに作るのでは、レジャーの多様化が急速に進み、都会に居ながらできる非日常の体験を享受している若い世代は呼び込めません。
必要なのは、その土地にしかないユニークでこれまで隠れていたような観光資源を掘り起こしていくこと。その土地の文化とも言える古い施設の建て直しやリノベーションは、その点において他地域との差別化の要素となります。
補助金を活用し既存プラットフォームを生かすことで、ゼロベースで施設を建設するより低コスト投資で済む。そのうえ、元来そこにあるロケーションの良さなど「隠れた資産」も使えば、ほかにはない「娯楽スポット」を作ることは可能です。
苦しい時期だからこそこうした努力を続けることのできる観光地だけが人口減少時代においても勝ち残っていくでしょうし、コロナ・ショック後にインバウンド市場が回復したとき、魅力的な観光地として日本の成長を支えるエンジンになれると信じています。
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