世界のネットをダウンさせたファストリーって何 ネット高速化サービスが障害引き起こした皮肉
ウェブサイトの信頼性と表示速度の改善を売りにするファストリーにとって、6月8日の事件ほど恥ずかしい出来事もない。
ファストリーは、世界中の企業がウェブサイトの運営に利用するクラウド・コンピューティング会社。だが同社はこの日、レディット、ツイッチ、フールー、ニューヨーク・タイムズなど多くの利用者を抱えるサイトがいきなりダウンし、1時間ほど使えなくなる障害を引き起こした。ファストリーによれば、影響は北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカのサイトに広がったという。
2019年から株価は2倍超に
サンフランシスコに本社を構えるファストリーは、ほとんどの人がその存在すら知らない裏方的な存在ながらも、インターネットの機能に欠かせない技術を提供している。同社は成功を収め、コロナ禍で人々のネット依存が深まった昨年には株価が急上昇。ビデオ会議サービスのズームをはじめとするテクノロジー企業の株価を数カ月前まで押し上げていたのと同じ波に乗った。
8日にシステムがクラッシュする前、ファストリーの株価は2019年の株式公開時の2倍を超える水準となっていた。
ファストリーが提供するサービスは「コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)」と呼ばれる。各地に高速サーバーを設置することでサーバーとユーザーの距離を縮め、サイトの読み込み速度を高める技術だ。中央のサーバーに依存するのではなく、サイトの内容をさまざまな場所のサーバーにコピーして配信する仕組みなのでサイトの信頼性も高まる、とファストリーは語っている。