財源、効果に問題あり、軽減税率に異論続出 来年に予定される消費増税を前にヒアリングが始まった

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消費税1%当たりの税収は約2・5兆円。すべての飲食料品の税率を軽減する場合、1%当たり6600億円の税収が減少する。消費税率が10%になったとき、仮に飲食料品の税率を8%に据え置くなら、1兆3200億円の税収が入らない計算だ。社会保障の財源として導入したはずなのに、貴重な財源が減る懸念がある。

日本税理士会連合会も反対ののろしを上げる。同会の平井貴昭理事は「税を軽減しても、効果の9割は低所得者以外に及んでしまう。欧州ではバターが軽減税率なのにマーガリンは標準税率。なぜそうなのか、合理的な説明は難しい」と指摘する。

消費税(付加価値税)を導入する国のうち、欧州は食料品への軽減税率採用が目立つのに比べ、アジアでは食料品とそれ以外の税率を同じにする単一税率の国が多い。「欧州では、軽減税率は税の簡素化の流れに逆行するとか、所得再分配の手段として適切でない、という議論がある。日本は付加価値税の後進国として欧州の経験に学んだほうがいい」(大和総研の鈴木準・主席研究員)

軽減税率に比較的理解のある消費者団体も、もろ手を挙げて賛成ではない。全国消費者団体連絡会の河野康子事務局長は「消費者の立場からすると、軽減税率を導入するなら、すべての飲食料品を対象にするのがわかりやすい。ただ、コスト増や事務手続きの煩雑さは、相当なものになる」と懸念を隠さない。

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