財源、効果に問題あり、軽減税率に異論続出 来年に予定される消費増税を前にヒアリングが始まった

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6月11日に開かれた政府税制調査会では、出席した約20人の委員のうち、軽減税率導入に賛意を示したのは新聞社出身の2人の委員のみ。「日本が軽減税率を導入すると、海外からかなり違和感を持って見られる。日本が租税政策をきちんと行えないようで非常に恥ずかしい」という痛烈な批判も飛び出した。

税の専門家の間では、軽減税率に代わる低所得者対策として、「給付付き税額控除」制度の導入を支持する意見が強い。しかし、自公両党の間では軽減税率の議論もあり、検討はストップしている。

駆け引きの激化は必至

最大の問題は財源だ。消費税率を10%に引き上げても、2020年にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化するメドが立たない中、軽減税率導入の余裕はあるのか。前出の鈴木氏は「消費増税は本来、弱者に配分する仕組みである社会保障の財源を手厚くするためなのに、その財源である税率を削るような議論が行われている。なぜ消費増税が必要か『そもそも論』を再確認すべき」と指摘する。

消費税率を10%に再び引き上げるかを決めるのは、7~9月期GDPが発表される今年11月から12月。14年度の税制改正大綱には「必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得たうえで、税率10%時に導入する」とうたわれた。が、関係団体からのヒアリングを聞くかぎり、国民の理解を得られているとは言いにくい。

「軽減税率に課題があることはよく認識している。しかし軽減税率を導入するのは与党の意思。やると決めたからには、来年10月に間に合うよう腹を決めてやるしかない」。軽減税率導入を主張する、公明党参議院幹事長の西田実仁議員はそう述べる。

反対の意見も根強い中、どんな軽減税率の制度を設計するのか。年末にかけて駆け引きは一層激化しそうだ。

(撮影:今井康一)

「週刊東洋経済」2014年7月26日号<7月22日発売>掲載の「核心リポート03」を転載)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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