健太郎さんの不安感と緊張はZoomお見合いでも露呈してしまった。貴美子さんと画面越しに顔を合わせるなり、「プロフィールからお話しください」「僕へのご質問はありますか?」と人事採用面接のようなトーンになってしまったのだ。
これは比較的真面目な婚活の場でよく見られる現象だ。女性慣れした積極的な男性などはほとんどいないので、初対面では変なコミュニケーションになりやすい。オンラインではなおさらだろう。第一印象の「楽しさ」で判断してしまうと、健太郎さんのような男性を排除することになる。
「百聞は一見に如かず」は本当
ここで貴美子さんはマチコ先生とも相談し、「難しそうな人だけど、1回は直に会ってみないとわからない」との判断を下す。本人同士のLINE交換を希望したのだ。あとは慎重派の健太郎さんの気持ちを押すだけだ。
「マチコさんからすぐに『貴美子さんは連絡先交換OKです。話していて楽しかったそうです』との連絡が来たのは意外でした。共通の話題がなかったので、面接っぽくなってしまったのですが……。でも、会ったら印象が変わるかもしれません。貴美子さんにも実際の僕を見てほしいと思いました。大宮さんに書いてもらったプロフィール記事は客観的だとは思いますが、自分としては正直『あれ?』と感じるところもあったからです」
夫婦そろって筆者の記事をくさすのはやめてほしい。しかし、貴美子さんの住む県内のカフェで会ってみると、お互いに好印象を持ったという。やはり百聞は一見に如かずなのだ。
「彼は身長も私と同じぐらいでなぜか黒いシャツを着ていて、外見の印象はそれほど良くはありませんでした。でも、気を張らずに話すことができたのが良かったです。昼過ぎから3時間ぐらい話したら帰ろうと思っていたのですが、話が盛り上がってしまって夜8時ぐらいまで一緒にいました」(貴美子さん)
「会ってみて、『何この感じ。普通にいいな!』と思いました。僕自身は小柄なほうですが、身長の高い女性は以前から好きなんです。貴美子さんを見たときにスラッとした人だなと思いました。食生活がちゃんとしていなければあのスタイルは維持できません」(健太郎さん)
人事部目線ならぬスポーツトレーナー目線になっている健太郎さんだが、意気投合したのだから言うことはない。お互いに結婚願望があるという前提なので、最初から「結婚するにあたってクリアにしておきたいところは?」という突っ込んだ話ができた。宗教や家族のことなど、かなりセンシティブな内容である。
こうした条件が「クリア」だったことだけが重要なのではない。何でも正直に話し合える相手には好意と信頼感を持ちやすい。3回目のデートでは健太郎さんのほうから「お付き合いしましょう」と申し出て2人は真剣交際に入った。昨年10月のことだ。
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