しかし、ここからは健太郎さんが受け身な本領を発揮する。結婚や同居に向けた行動は何もしないままに、年末は両親が住む関西の実家に一人で帰省する計画をしていたのだ。貴美子さんは自分がリードせずにはいられなかったと振り返る。
貴美子さんが心を鬼にして……
「私は本来、他人に何かを誘導したり強制したりする性格ではありません。でも、心を鬼にして言葉にしていかないと何も進まないと思いました」
そうして貴美子さんが期間限定のリーダーシップを発揮。年明けから親への挨拶と両家の顔合わせ、婚約に結婚というスケジュールが進行した。その間、健太郎さんは何を考えていたのだろうか。
「(結婚は初めてなので)どう進めていいのかわからないし、コロナ禍なので親からどう思われるかなー、と思っていました。最初、貴美子さんから言われて、『えーっ、そんな急に!』となりました。でも、半日も経つと彼女の意見が正しいことが理解できました」
このタイミングでなぜか満面の笑みを浮かべる健太郎さん。ちょっと変わり者だけど憎めない人物だ。
お見合い当初に心配をしていた「趣味が合わない」問題はどのように克服したのだろうか。貴美子さんは「20代の頃だったら無理だった」と断言する。
「大会の応援にも行き、彼の仲間に会わせてもらいました。みなさんのストイックさにはびっくりしましたが、中途半端ではないので清々しかったです。健太郎さんは減量中も温厚で、私に当たったりはしませんでした。今でもスポーツジム通いが彼の生活の主軸です。デートはその予定に合わせています。30代になって器が大きくなった私だからこそ彼を受け入れられているんです(笑)」
軽く揶揄されてもマイペースな健太郎さんは動じない。貴美子さんが文化系な趣味に打ち込んでいることを激賞し、「やり続けてほしい」と強調する。
「お互いの分野を完全には理解できません。だからこそ、それぞれの時間も大事にし合えるのだと思います。それに僕、頑張っている人が好きですから」
わずか1年前は何の接点もない他人同士だった貴美子さんと健太郎さん。今では「新たに家族になるのはこの人しかいなかった」という様子で安心しきっているように見える。結婚という行為には人間関係の不思議さと強さが凝縮されていると感じた。
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