人類初「AIと融合」した61歳科学者の壮絶な人生 「ネオヒューマン」の生活は喜びと希望に溢れる
経営戦略コンサルタントとして、若くして大きな成功をおさめたピーター博士は、50代を前にアーリーリタイア。同性のパートナーであるフランシスと世界中を旅しながら暮らす、悠々自適の生活を手に入れる。
しかし、人生のお楽しみはまだこれからというタイミングでALSを発症。博士が58歳のときだった。
ALSといえば、かのスティーヴン・ホーキング博士が患った病気としてご存じの読者も多いだろう。よく知られているように、全身の筋肉が段階的に動かなくなっていき、最終的には自分の体に「閉じ込められた」状態になる病気だ。意識は完全に保たれているにもかかわらず、まばたきをしたり目玉を動かしたりする以外、外部との意思疎通もままならなくなる。
それゆえに、ALSは「最も残酷な病気」などと形容されることが多い。しかしピーター博士は、絶望するより先にこう考えた。「それって、本当なのか?」と。
これは決して「現実逃避」などではない。「鋼(はがね)のメンタル」というようなものでもない。人生の中で何度も大きな挫折に遭遇しているピーター博士は、そのたびに真正面から傷つき、眠れない夜を過ごしてきた。
そんなとき、ピーター博士が必ず頼りにするのは、「思考」という武器だ。
7歳にしてアインシュタインに魅せられたピーター博士は、科学者のマインドセットを何より重んじ、つねにあらゆる前提や常識を疑う。そして、あらゆる選択肢や仮説を検証し、「変化を起こす」ための道を追求しつづける。
だからこそ、どれほどの強敵を前にしても、ピーター博士にとって「敗北」はありえない。考えることをやめさえしなければ、必ず戦況を変えることはできるはずだからだ。
さまざまな「迫害」に勝利し続けた波瀾万丈な人生
これまでにも、ピーター博士の行く手には、さまざまな敵が立ちはだかってきた。
ゲイであるからという理由で少年時代のピーターを迫害したパブリックスクールの校長。20歳にして出会った「運命の男性」フランシスとの交際をかたくなに認めようとしない両親。名門コンサル会社で、若手ながらに目覚ましい業績を上げるピーター青年の昇進を阻もうとする狡猾な同僚。旧弊なイギリス社会で、ようやく「シビルパートナーシップ(同性間のパートナーシップを法的に認める制度)」の実現が進むなか、横槍を入れようとする聖職者たち。
しかしピーター博士は、どんな敵にも屈することなく、いつも最後には高らかに勝利を宣言してきた。
2005年には、イギリスで初めて「結婚式」を挙げたゲイカップルとして、全国のメディアから注目を浴びている。
経営コンサルタント時代の1994年に、『会社の不文律』(ダイヤモンド社より邦訳刊行)という世界的なベストセラーを出していることも注目に値するだろう。この本は、企業の変革や成長を妨げている「暗黙のルール」をひもといたもの。まさしく「常識をひっくり返して変化を起こす」ことを信条とするピーター博士の本領が発揮された一冊だ。
ちなみに、同書の刊行時には、『ライフ・シフト』のリンダ・グラットン氏が次のような賛辞を寄せている――「凡百の組織改革本とは一線を画した本。1990年代の“マネジメントのバイブル”にふさわしい」。
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