うつの人が自己啓発本を真に受けてはいけない訳 逆に自己嫌悪に陥ってしまっては意味がない

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長年うつを患っている起業家が自らの体験をもとにつづります(写真:読書 USSIE/PIXTA)
新型コロナ感染症の流行も手伝って、経済的に不安定な状況に追い込まれている人が少なくありません。心身のバランスを崩す人も多いが、そのような人はどのように生きていけばよいのでしょうか。
長年うつを患いながらも会社を経営してきた起業家の林直人氏は「起業もひとつの選択肢である」と説きます。その前提として「一般的な自己啓発本や経営者本などは読まないほうがいい」と言います。このたび出版された初の著作『うつでも起業で生きていく』から一部を抜粋。全3回でお届けします。

うつの人が100冊の自己啓発本を読んでみたら……

私は根っからのうつ病で、高校時代に学園祭の仕事とハードな勉強で体調を崩し、以来15年ちゃんとした時間にぐっすり眠れたことは数えるほどしかありません。

見た目が明らかに病的だったので、大学に入ってもバイトにも採用されませんし、知り合いの会社を手伝っても使い物にならず、追い出されるようにして辞めたこともありました。そんな私を救ってくれたのは「起業」でした。

起業というのは、万人にとっての最適解ではないでしょうが、少なくとも選択肢のひとつではあります。就職もバイトもうまくいかない、というような、「うつ病」や「それ以外の精神疾患」を抱えた方ならばなおさらです。

ところが、うつその他の「精神疾患を抱えた人向けの自己啓発本」というのはほとんどないのです。起業をしてみようと思った精神疾患をお持ちの方は、仕方がないので「元気な人向けの自己啓発本」を読むしかないのですが、これらは当然ながら「元気な人」向けに書かれているので、精神疾患を抱えた人には必ずしも適応しません。

私もざっと100冊以上のいわゆる「自己啓発本」「経営者本」の類を読んできましたが、これらの本はほぼ、まったくと言っていいほど役に立ちませんでした。そして、同じ事をして成功した人をほとんど知りません。うつの人は、むしろこれらを真に受けて苦しみを増すことが多いのです。

なぜ、いわゆる「自己啓発本」「経営者本」を読んで真に受けても意味がないのでしょうか。これらに書いてあることをそのまま実行しようとすると、なにしろ疲れます。疲れるのはうつ病の大敵です。人よりも体力気力が少ないわけですから、「疲れる」のだけはなにがなんでも避けるようにする必要があります。

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