うつの人が自己啓発本を真に受けてはいけない訳

逆に自己嫌悪に陥ってしまっては意味がない

ポジティブでない人は「思考が現実化」してもいいことはありませんし、出力が一定ではない人にとって「7つの習慣」は多すぎて実行できません。「金持ち父さん」はある程度正しい部分があるでしょうが、凡庸な投資で老後の心配がないぐらいまで運用資産を増やすのはかなり難しく、かといって下振れすれば借金をするようなリスクを背負う勝負を、真面目な(違う言葉で言えば、堅実、後ろ向きな)人が多いうつ病患者がやるかと言えば、やらないと思います。やらないものは役に立ちません。

孫正義氏を真似しても仕方がない

「経営者本」というか、過去に成功したカリスマ経営者みたいな人のやり方をあまり参考にしすぎるのもよくないと思います。まず時代が違います。その人が成功したことは事実でしょうが、それはその人が先駆者だったから成功したわけで、これから同じことを同じようにしても成功するのは難しいのではないかと感じます。

かく言う私も、大学3年生になる手前に、就職が絶望的だと感じて起業を決意したのですが、当時参考にしたのは、あのソフトバンクグループの社長、孫正義氏でした。今にして思えば、いちばん参考にすべきではない起業家を参考にしてしまったと後悔しています。

『うつでも起業で生きていく』(河出書房新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

孫氏の経営は、いわば大風呂敷を広げて、あとからそれを回収していくようなものです。このやり方は非常に気力も体力も使います。うつ病を患っていない、一般の人でさえ真似するのは困難です。実際、そうできる人が少ないからこそ、孫氏は経営者として大成功しているわけです。なので、私たちが孫氏のやり方を真似しても仕方がないのです。

一般論に落とし込めばいいかというとそういうものでもなく、たとえば渡邉美樹氏の「夢に日付を」などもうつ病の人には非常によくないと思います。まず夢に日付を入れ、その途中経過にいちいち日付を入れていくというのですが、うつの人にとって、達成できなかった目標は一つひとつが自分を傷つける刃になります。だから、計画はできるだけフレキシブルに、今月の目標は達成できなければ翌月に持ち越せるようにしておかなければいけません。

これはどんな場合もそうなのですが、うつ病あるいは他の精神疾患を抱えた人にとっては、「自分が働きやすい環境を整えること」が最も大事です。そしてそれが起業である場合、事業の仕組みも含め、徹底的に働きやすい環境を整えることが最優先になります。

それでは、どのような形で起業すれば「働きやすい環境」になっていくのでしょうか。その具体的な方法を次回記していきます。

(次回は6月11日配信予定です)

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