うつの人が自己啓発本を真に受けてはいけない訳 逆に自己嫌悪に陥ってしまっては意味がない

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うつ病には、起き上がることも、食事の味を噛みしめることも、寝ることも、音楽を聞くことも、本を読むこともできないという絶不調期と、今の私がそうですが、本を書いたり、仕事をしたりできる、わりと元気な時期があります。躁転と鬱転を繰り返す双極性障害ではなくとも、おおむねこのサイクルを行き来するのがうつ病です。

アントニオ猪木氏の言葉に「元気があればなんでもできる」という言葉がありますが、これはうつ病患者にとっては最悪の形で実現してしまうことがあります。絶不調期だと、たとえ希死念慮があっても動くことができないので寝ているだけですが、元気が出てくるにつれて自殺の方法が具体化してしまい、なまじ動けるせいで既遂に至ってしまうというのはよく知られた話です。

せっかく回復期が訪れたのに、沈没しかけている自分の人生をどうにか好転させようと本を読んだり、セミナーに訪れたりした結果、自己嫌悪に陥ってしまっては何の意味もありません。

システムや戦略というより個人の労働量依存型

もうひとつ、「自己啓発本」「経営者本」「早起きセミナー」あたりがフィットする業種というのは、システムや戦略で差別化していくというよりは、個人の労働量依存度の高い、いわば人力で物事を解決するような事業が多いのです。例として挙げるなら、保険の代理店や、居酒屋や、テレアポ代行業のような、利幅の低い業種の経営がその類です。実際、私もセミナーに伺ったときにやたらと保険の営業を受けました。基本的に死にたいと思っている人間に生命保険を薦めてもどうしようもないと思うんですけどね。

こういった業種が悪いと言いたいわけではありません。むしろそこで勝ち残っている人々は、猛烈な競争の中で生き残っているとても優秀な人々と言えるでしょう。彼らのような業種で勝ち抜くためには、士気を高め、自己管理をピシッとパシッとして、全体的に仕事ができないと利益が出ないのです。

さて、病を抱えた人が彼らと同じように、仕事ができるでしょうか? 自己管理をピシッパシッとできるでしょうか? もしそうじゃなければ「自己啓発本」「経営者本」「早起きセミナー」あたりに出てくる経営者のマネはしないほうがいいです。彼らとは人生観、歩むべき人生が違うのです。

いわゆる「元気な人向けの自己啓発本」の類は、元気で前向きでポジティブな、いい感じに自分の役に立つところだけを抽出して使える人のために書かれたものなのです。

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