失敗する「新規事業」には3つの視点が欠けている 「アイデアと熱意さえあれば」は大きな誤解だ

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たとえば一緒にされがちな「売上」と「利益」も、実は別のミッションです。売上拡大が第一で、売上さえ上がるなら利益率の低い商売でも始めよう!という企業もありますし、IT企業など利益率を重視する経営者であれば利益率が5%以下の低利益事業はやらないという判断をするでしょう。月に5万円でも黒字なら事業を続けていてもいい、という企業もあるでしょうし、そんな小さい商売やっても仕方ない、と別の企業では言われるかもしれません。

利益が出ない赤字事業は意味がないかというと、必ずしもそうではありません。赤字であってもユーザーを獲得し既存事業に貢献できるのであればOKのケースもありますし、PR効果が目的で、先進性のアピールができるなら売上すら立たなくてもいい、というケースもあります。

おなじ結果を出しても、A企業では成功とされたり、B企業では失敗とされたりします。1年で「期待はずれ」と言われてある企業で潰された事業が、時間をかけて大きく花開くケースもあります。

「来年までに2千万稼ぐ赤ちゃんを産め」?

「期限」と「約束」があることは、「アート」と「ビジネス」の大きなちがいです。ですからビジネスでは「時間」を意識することが重要です。

「事業は生き物」とよく言いますが、赤ちゃんが生まれ、いろいろ学びながらやがて大きくなり、社会人として稼ぐようになって年老いていくように、事業において時間はとても大きなファクターなのですが、企業では時間軸が忘れられることが結構多いのです。

あるお金持ちの家に待望の赤ちゃんが生まれました。父親は外資系証券会社の役員を務めるニューヨーカーでお金はうなるほどあります。年老いてから授かった赤ちゃんを彼はとても可愛がり、自分と同じような「成功者」になってほしいと考えます。

彼は金の力にものを言わせ、ハーバードやスタンフォードからスター教授を何人も個人教師として雇い、つきっきりで一年間、英才教育します。

そして一年後。彼は息子に言います。「これだけ金も手間もかけたのに、お前は一銭も稼ぐようにならない。失敗作だ」

子育てを経験した人でなくとも、誰もが愚かな親だと思うでしょう。あまりに馬鹿げたジョークだと思ったかもしれません。ですが、ジョークではなく大真面目でこれとおなじことをやっている企業が実はたくさんあるのです。

「新規事業」というと0→1の事業やイノベーションを期待されがちですが、0→1事業というのはいわば「赤ちゃん」です。いつ生まれるのか、そしてどう育つのか、本来コントロールできない。

企業の新規事業でアート・シンキングを取り入れるときには、アートのようにコントロールできないものを「期限」と「約束」のある企業の中でどう育んでいくのか、よく考える必要があります。

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