失敗する「新規事業」には3つの視点が欠けている 「アイデアと熱意さえあれば」は大きな誤解だ

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さきほど、赤ちゃんに年収を求めるのは馬鹿げている、と言いましたが、誤解のないようにもう少し丁寧に説明すると、「1年後に子供に年収を期待してはいけない」ということではありません。

企業は利益がなければ存続できませんし、株主や従業員、顧客などのステークホルダーのために成果を出す必要がありますから、「期限」があるのは致し方ないことです。新規事業は「赤ちゃん」だと言われても、育って稼ぐまで20年も待っていられない、という事情もあるでしょう。来年2千万稼ぐようにならなければ自分が「親」の座を追われかねない、という方だっているかもしれません。

安心してください。1年後に2千万稼ぐ子供をもつことは可能です。

「赤ちゃんが1年後2千万稼ぐのは不可能」ですが、それは「1年後2千万稼ぐ子供をもつ」のとよく考えれば矛盾しません。そう、重要なのは「赤ちゃん」にこだわらない、ということなのです。

もし、親が1年後に2千万稼ぐ子供をもちたいなら、ハーバードに通う学生を養子に迎え、リソースを使って英才教育すればいいのです。このやり方なら投資した分、1年後にしっかりリターンが受け取れます。

ここでいう「年齢」とは、事業を立ち上げてからの年月ではありません。そうではなく、「市場の年齢」のことです。0→1の事業というのは「ニーズが存在するのかすら分からない」、市場がまだない事業です。一方、世の中にはすでに市場が立ち上がり、売上や利益が出ている事業もあります。

「養子」を迎える、とはすでに市場が立ち上がっている事業に買収やコピーによって参入する、ということです。そしてそこにお金とリソースをつぎ込んでブーストするのです。

「新規事業」というと0→1の事業を考えがちですが、すでにある市場に参入するのもその企業にとっては立派な「新規」です。もし、「期限」があってすぐ大きな年収を求めたいのなら、赤ちゃんから始めず養子を迎えるべきです。いつまでにどんな子供がほしいか、「期限」と「約束」をあらかじめ確認しておくことが重要です。

「自分」に合わない新規事業は続かない

「期限」と「約束」、「いつ」までに「どれくらい」の子供がほしいか決まったとして、では「どんな」新規事業を始めるべきでしょうか。

赤ちゃんであれ養子であれ、大事なのはそれが「自分」にフィットしているか、ということです。自前でイチからつくるのであれ、M&Aであれ、その企業ならではの価値、つまり企業の「自分」に根ざしていなければ事業はなかなかうまくいきません。

0→1の場合は特に、突き当たる抵抗をぶち破って事業を進めるエネルギーがないといけないので、そもそも「自分」に合っていなければうまくいきません。0→1でなくとも、「自分」に合わない無理な多角化をして、結果として「自分」を見失ってしまう企業もあります。

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