失敗する「新規事業」には3つの視点が欠けている 「アイデアと熱意さえあれば」は大きな誤解だ

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企業で新規事業をつくる際、よくニーズ調査を元にしたり、社会課題やブロックチェーンやAIのように流行の新しい技術を起点にしたりします。しかしこのように外の情報から始めた事業は、往々にしてあまりうまくいきません。

「外の情報」を起点にすると他社と「おなじ」方向に向かってしまうからです。外の情報は他社にもみえていますし、そこにロジカル・シンキングを適用すると、前回の記事で紹介した箱ティッシュの例のように、他と「おなじ」、「どれでもいいもの」をつくってしまいます。

また、「自分」を起点にしていなければ他者以上のパフォーマンスが出せません。「新しさ」より「らしさ」とよく言うのですが、このスピードの速い時代、「新規性」はすぐコピーされて陳腐化してなくなってしまいます。しかし「自分」らしさが起点となっていれば、たとえコピーされても、さらに一歩先をいくことができます。

企業の新規事業は、「起業」や「アート」とはちがい、基本的に借りものです。多くの人の合意を取りつける必要がありますから、ともすると「自分」起点を忘れ、外部のデータに頼ったり、定石に照らして判断してしまいがちです。

しかしだからこそ、企業の新規事業では「自分」を意識することが重要なのです。

ここでいう「自分」とはメンバー個人の「自分」ではありません。そうではなくその企業の「自分」のことです。企業にも個人とおなじように、他社に真似できない「自分」、つまり「自らの本来的な務めや性質」があるのです。

多くの企業がビジョンやミッション、バリューを定めていますが、自社にだけ当てはまるような「自分」発のミッションやバリューを定められている企業は稀です。自社が「自分」をよく分かっているかは簡単にチェックできます。ミッションやバリューを同業他社などと入れ替えてみればよいのです。

「借りもの」だからこそ「自分」をみつめよう

あなたが勤める会社のミッションやバリューを書き出してみましょう。
それは他の企業にもあてはまるものではありませんか?

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もし他社にもあてはまるようなものだったり、他社と入れ替えても違和感がなかったら注意が必要です。

僕の用語では「世界平和バリュー」と呼んでいるのですが、多くの企業のミッション、バリューは美辞麗句が並び耳触りはいいものの、「自分」のバリューにはなっていません。そのような状態で事業を考えると判断がぼやけてしまい、やがて他社でもありがちな「おなじ」に向かってしまいます。

逆説的ですが新規事業は「借りもの」だからこそ、ニーズなど外をみるよりも、「自分」をみつめ、それを起点に進める意識が必要なのです。

若宮 和男 起業家(uni'que Founder/CEO)、アート思考キュレーター、ランサーズタレント社員、一級建築士

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わかみや かずお / Kazuo Wakamiya

建築士としてキャリアをスタート。その後東京大学にてアート研究者となる。2006年、IT業界に転身。NTTドコモ、DeNAにて複数の新規事業を立ち上げる。2017年、女性主体の事業をつくるスタートアップとして『uni'que』を創業。「全員複業」という新しい形で事業を成長させ、2019年には女性起業家輩出に特化したインキュベーション事業『Your』を立ち上げるなど、新規事業を多数創出している。資生堂をはじめ数々の企業内新規事業の外部ブレーンを務める。アート思考の第一人者として講演やワークショップを通じ社会にアートを根付かせる活動も行う。著書に
『ぐんぐん正解がわからなくなる! アート思考ドリル』(実業之日本社)などがある。

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