朝ドラ「おかえりモネ」が大いに期待できる理由 今後の「ドラマ黄金時代」への牽引役となるか

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あと、第1週で目を引いたのは、ドローンを駆使した森林の映像だ。緑の色をとてもヴィヴィッドに映し出していて、基本スタジオ内での映像に終始した前作『おちょやん』に馴染んだ目に、インパクトが大きかった(補足すれば、『おちょやん』も最後まで楽しく見た。浪花千栄子が乗り移ったような杉咲花の演技力を堪能した)。

さらには音楽もいい。主題歌となったBUMP OF CHICKEN『なないろ』もいいが、劇伴(ドラマの伴奏音楽)を担当する高木正勝が、地味ながらいい仕事をしている。映画音楽での功績が大きい人で、個人的には映画『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)における、ピアノを中心とした今まで聴いたことのないような音使いに腰を抜かした記憶がある(とくに、母親と雨と雪が、雪の中を滑っていくシーン)。

以上並べてみると、何かが突出しているというよりも、国語・算数・理科・社会オール4という感じの優等生として、視聴者の生活にスムーズに溶け込んだのではないだろうか。いろいろ言われがちな朝ドラにとって、優等生であることは、決して悪いことではない。むしろ成功への必要条件だろう。楽しみな朝がこれから半年続きそうだ。

「神クール」のドラマ群

今風に言えば「神クール」とでも言うべきか。この4月から6月までの3カ月は、視聴率はともかく、私にとって満足度の高いドラマのラッシュとなっている。

日本テレビ『コントが始まる』、フジテレビ『大豆田とわ子と三人の元夫』、テレビ東京『生きるとか死ぬとか父親とか』、そしてNHKの『今ここにある危機とぼくの好感度について』と『半径5メートル』。このラインナップに『おちょやん』と、それを継いだ『おかえりモネ』が加わる。

それぞれ、舞台も俳優もテイストもバラバラなドラマ群なのだが、あえて共通項を見つければ、脚本のクオリティが高いこと。とくにセリフの言葉遣いが練られていること。脚本家・坂元裕二のセリフワールドが炸裂する『大豆田とわ子と三人の元夫』などはその典型だが、それ以外の作品も、セリフの力で視聴者を十分に納得させる。

昔風に言えば「文芸的小品」という感じだろうか。文学的、カルチャー的に味わい深いセリフにあふれたドラマが、この4月から一気に押し寄せて来たというのが、私個人の印象なのだが、この意見に賛同してくれる方も少なくないはずだ。

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