「気候変動」が近い将来もたらす2つの経済リスク アメリカも実質的影響とリスクを検証し始めた

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アメリカでは、気候変動が経済全体に与える影響やリスクの検証が始められている(写真:Johnny Milano/The New York Times)

ジョー・バイデン大統領は、気候変動が経済全体に及ぼすショックに備えるよう政府機関に指示した。深刻化する自然災害によって住宅価格や退職金の価値、さらには国際的な金融システムの安定が脅かされるようになっているからだ。

かつては遠い未来の脅威として軽視されてきた気候変動だが、すでにアメリカの国民生活に悪影響が及びつつあることが5月20日に署名されたこの大統領令であらためて示された格好になる。アメリカ環境保護庁(EPA)はこの前週に公表した報告書で、熱波、山火事、洪水の増加という形で地球温暖化の影響はアメリカ国内でも感じられるようになってきたと指摘した。

バイデン政権の新たな取り組みは、自然災害が消費者、企業、投資家、そして政府そのものに及ぼす経済的なリスクに対処することを狙っている。

温暖化で金融システムが崩れる理由

専門家は、地球温暖化により、大きくわけて2種類の経済リスクが生じると警告している。1つは、気候変動関連の災害で建物、作物、サプライチェーンに実害が出て、企業や投資家が被る損失が増大するリスク。もう1つは、政府や消費者が風力や太陽光などの再生可能エネルギーへのシフトを進め、化石燃料に依存した企業の価値が急落するリスクだ。

どちらも経済の主要セクターを不安定化させ、2007〜2009年の世界金融危機と似たような状況に発展するおそれがある。

「現代の金融システムは気候が安定していることを前提に構築されている」とブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)委員長は20日の電話記者会見で語った。「もはや私たちが暮らす世界がそのようなものでなくなってしまったことは明らかだ」。

今回の大統領令は政府機関に対し、気候変動が連邦政府の資産や税収に与えるリスクを報告するよう命じている。労働省には年金を守る策を見つけ出すよう指示。政府と取引する企業に温室効果ガス排出量の開示を義務付けることも検討課題に掲げた。

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