「気候変動」が近い将来もたらす2つの経済リスク アメリカも実質的影響とリスクを検証し始めた
情報開示が重視されたのには極めて重要な意味がある、と気候変動対策で投資家と協力する非営利団体Ceres(セリーズ)のミンディ・ルバーCEO兼社長は話す。投資家や顧客、さらには潜在的な従業員が離反する可能性が圧力となり、気候変動で大きなリスクを抱えている会社も行動を見直さざるをえなくなるというロジックだ。
「自社のリスクを開示することになれば、企業はそうしたリスクの軽減に動くようになる」とルバー氏。
米財務省とFRBでも気候変動が重要テーマに
この大統領令の執行で中心的な役割を担うのが金融安定監視評議会(FSOC)の議長を務めるジャネット・イエレン財務長官だ。主要金融監督機関で構成されるFSOCは独立した立場から気候変動がアメリカの金融システムの安定に与えるリスクを評価することになる。
気候変動は経済の全域に波及する「システミック・リスク」だ——。大規模投資家のグループがそんな警告を発したのは昨年のこと。化石燃料および化石燃料に関連した投資の価値が急落すれば、経済は大混乱となりかねない。そうしたリスクに企業が備えるよう対策を講じ、リスクの引き下げに動くべきだと同グループは連邦政府に迫った。
取り組みのいくつかはすでに始まっている。イエレン氏は4月、財務省内に気候変動対策「ハブ」を新設すると発表。同ハブは気候変動に関連した経済リスク対応の中枢となるもので、税制を活用した気候変動対策も検討対象になる。
ただ、気候変動を金融システムに対する潜在的な脅威として扱うことには一部で反発もでている。ローレンス・サマーズ元財務長官は先日、中央銀行の意識が温暖化問題に向かいすぎていると批判した。
一方、連邦準備制度理事会(FRB)のランダル・クォールズ副議長(銀行監督・規制担当)は19日の下院公聴会でこのような批判が出ていることについて質問され、気候変動に注目するのは金融規制の一環だとFRBの立場を擁護した。気候変動は金融業界およびそれを監督する政府が考慮しなければならない「潜在的リスク」というわけだ。
今回の大統領令を見れば、気候変動が経済に与えるリスクがいかに広範囲なものとなりうるかがわかる。そして、そうしたリスクがすでに現実のものになりつつあることを示す兆候も各方面で浮かび上がっている。