大手ゼネコン、受注堅調も「2ケタ減益」続出の衝撃 大型・小型工事の受注競争に見え始めた異変
大型工事の収益寄与が低いとなると、スーパーゼネコンは期中に受注して期中に収益計上できる手頃な案件が欲しくなる。そこで前2021年3月期あたりから、スーパーゼネコンが小型工事にまで群がる状況が散見されるようになった。業界関係者からは次のような嘆き節が聞こえてくる。
「これまで見向きもしなかった20~30億円ぐらいの規模の民間案件に、スーパーゼネコンの営業員が顔を出す(営業のアプローチをする)ようになった」(中堅ゼネコンのIR担当者)。「当社が手がけるような3億円ぐらいの小型工事の入札にも、スーパーゼネコンがエントリーしている。応札業者の数が増えているのは確か」(別の中堅ゼネコン幹部)。
中・小型案件まで受注競争が厳しくなれば、当然その工事の採算も下がる。例えば、巣ごもり需要などを背景に新設が相次いでいる物流センターは、「スーパーゼネコンが(入札に)入ることもあるが、中堅ゼネコンが安い金額で突っ込んでくるケースもある」(大手ゼネコンの広報担当者)という。前出の中堅ゼネコン幹部は「物流施設は実際、利益率が低い。当社ではオフィスビルが7~8%の利益率で、物流施設はそれよりも4%ほど低い」と話す。
採算低下を引き起こす構造的課題
こうした工事採算低下の真因は、受注環境の変化だけでなく、建設業界が抱える構造問題にあると言ってよい。
国内の建設業界は、4~5重もの多重下請け構造の中に46万社がひしめく。ゼネコンを頂点に多数の中小・零細事業者が下請けを担う構図だが、スケールメリットを生かせず業務によってはアナログな作業も残るなど、経営面での非効率性が指摘される部分は多い。
海外で浸透している、工事原価などを明示する透明性の高い入札形式が導入されている案件はごく一部。受注環境がひとたび厳しくなると、ゼネコンが下請けに無理な工事代金の値下げを要請するなどして、一気に受注価格のたたき合いへと陥りやすい。
少子高齢化が進む日本では、今後建築需要が大きく膨らむことは想定しにくい。たとえコロナ禍が終息しても、東京五輪などの特需で我が世の春を謳歌した数年前の環境に戻ることはもはやないだろう。バブル崩壊後やリーマンショック後、建設投資がしぼむ中で赤字覚悟の受注に走ったゼネコン各社。「いつか来た道」に戻らないためにも、建設業界は大型再編を含めた変革を迫られている。
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