高杉良82歳、経済の深淵を描き続けた男の快活人生 自伝「破天荒」は最後の作品になるかもしれない

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「これまでも言ってきたんだけどね、学歴ハングリーが僕のパワーになっていると思う。ハングリー精神とアルチザン(職人気質)を大事にしてきたね」。戦後昭和をハングリーに生き抜いてきた高杉の目に、いまとこれからの日本はどう映っているのか。

「日本人の気質にはすばらしいものがあるぞ」

「ここまで落ちるとは思わなかったですね。しかし日本人の底力というのは、言っちゃ悪いけど中国なんか問題にならないぐらいあるわけですよ。日本人独特の優しさもある。だからこのままで済むはずがない、済ませちゃダメよと。日本人が東アジアの盟主としてリーダーシップを取っていた時代があるのだから、日本人の気質にはすばらしいものがあるぞと若い人にも伝えていかなければならない。

高校中退の青年が業界紙記者を経てベストセラー作家になるという人生を駆け抜けてきた(写真:©新潮社)

いま国会議員がまったくダメ、とにかく政治がダメなんだ。彼らの優遇のされ方は相当なものですよ。国民に選ばれた存在のはずが、政治家も小粒化している。とにかく今ね、みな委縮して小粒化していますよ」

昭和の経済人たちを見続けてきた高杉が繰り返す「小粒化」の言葉には説得力がある。

「若い人がいじけてしまうのがいちばん困るよね。ミドル層もすっかり小粒化してしまって、国家のあるべき論を語れる人がいない。やはりこれからの子どもたちのことを考えないと。散歩で保育園の子どもが歩いているのを見ても、元気なのはやっぱり女の子。保育士さんも本当によくやっているよ。女性が活躍する国は必ず強い国になる」

4年前の2017年、高杉は小学校6年生から中学の途中までめぐみ園という児童養護施設にいたことを、小説『めぐみ園の夏』で明らかにした。両親が不仲から離婚し、きょうだい4人全員が施設に入所、一番下の3歳の妹だけは養女としてもらわれていく。

12歳の聡明な高杉が大人の理不尽や「身分をわきまえろ」という言葉を投げつけられるいじめや差別と闘い、やがて弟と2人で実父の新しい家庭に引き取られ「園」を卒業するまでの、少年時代の切なくも瑞々しい思いがあふれる小品だ。物語の最後に、老年期の高杉は成長した妹とめぐみ園での別れ以来初めて再会する。そして述懐し、涙するのだ。「母によく似てる」

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