日本は、経済安全保障を含む包括的な対中戦略を策定し、年末の2+2に向けて台湾有事の日米共同Planningを完了しなければならない。中国は4月23日、中国海軍初の強襲揚陸艦、大型ミサイル駆逐艦およびSLBM搭載原子力潜水艦を同時に就役させた。式典には習主席に加え、張又俠、許其亮中央軍事委員会両副主席が顔をそろえ、本格的な台湾侵攻用の着上陸・海上戦力の増強を誇示した。
この膨れ上がった軍事力を使わずにおくことは、世論をあおり軍に臨戦態勢を鼓舞している習主席にとって容易なことではない。中国の過信と誤算を防止するには、日米が一致して行動する準備ができていることを示す必要がある。
もう1つは、防衛予算をアメリカが同盟国に求めるGDP比2%まで増額する計画を作り、来年度の防衛費をその計画に沿って大幅に増額することだ。アメリカの国防予算はGDP比で約3.5%であり、台湾も2020年防衛費を前年から5.2%増(GDP比2.3%)とし、さらに増額する10年計画を公表した。それでも、中国の2021年国防予算案の前年比6.8%増と比較すると見劣りがする。日本の令和3年度防衛費はGDP比0.95%の見込みであり、この水準では共同声明に明記した防衛力強化の真剣度が疑われる。
日米台中、どの国にも最悪の事態を回避するには?
実際、アメリカ議会の戦略的競争法や太平洋抑止イニシアティブに呼応し、南西諸島方面の防衛態勢等を強化する予算が必要だ。バイデン政権は、国防省の特設チームによる対中戦略の策定と世界規模の戦力態勢見直し(GPR)を実施中である。西太平洋へ戦力を増強し、中国有利に傾斜しつつある地域の軍事バランスの回復が目的だ。その最前線にある日本は予算の裏付けのある戦力態勢強化を確約し、アメリカのGPRや対中戦略策定に連動させていくべきだ。
歴史は、まさかそんなことは起きないと思われた愚行の例に満ちている。日米台中のどの国にとっても最悪の事態を回避するには、中国の反発による経済制裁や情報戦を恐れず、中国の意図と能力に対抗できる日米台の意図と能力を明示していくしかない。そのためのコストとリスクは、最悪の事態に比較するまでもないであろう。日本には共同声明の真剣な有言実行が求められている。
(尾上 定正/アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー、元空将)
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