台湾TSMCへの高性能半導体依存が益々強まる事情 世界は巨大ファウンドリとどう向き合えばいいか

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TSMCへの依存リスクを地経学の視点から考える(写真:I-Hwa Cheng/Bloomberg)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

チョークポイントとなった台湾ファウンドリ

高性能のロジック半導体は、5G、AI、IoT、自動運転といったイノベーションの鍵を握る戦略的な基幹部品である。そのサプライチェーンの中で「チョークポイント」ともいうべき重要な位置を占めているのが、台湾の半導体メーカー・TSMCである。

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TSMCは1987年に、世界発の受託製造(ファウンドリ)の専業企業として設立された。2000年代以降、ロジック半導体産業におけるフラグメンテーション(従来垂直的に統合されていた生産工程が細分化され、その一部が生産工場外、とくに外国で行われるようになったこと)の潮流を追い風として急速な成長を遂げた。世界のファウンドリ市場でシェア54%(2020年)を占める巨大な存在に成長している。

TSMCは、最先端の微細加工技術でも、インテルを抜いてフロントランナーになっている。現在、5ナノプロセスによるロジック半導体の量産を安定的に行っているのは、世界で唯一、TSMCだけだ。

TSMCの優位性の高まりとともに、最先端のロジック半導体のサプライチェーンでは、TSMCへの一極集中が進んでおり、これがもたらすリスクに世界の注目が集まっている。実際、アップルの通信用チップやエヌビディアのAIチップといったアメリカのイノベーション力を象徴する民生用チップから、アメリカ軍の最新鋭ステルス戦闘機F35に搭載される半導体チップまでが、いまやメイド・イン・タイワンとなっている。

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