大竹文雄:大阪大学特任教授
栗野盛光:慶應義塾大学経済学部教授
小島武仁 : 東京大学教授
小林慶一郎:慶応義塾大学経済学部教授
野田俊也:ブリティッシュコロンビア大学助教授
室岡健志:大阪大学准教授
予約システムがインセンティブの調整に失敗
ワクチン接種のために電話をかけてもつながらない、インターネットで予約しようとしても、システムがダウンして予約不能であったり、接続に長時間待たされたりするという問題が生じている。
このような問題が発生するのは、ワクチン接種に関する予約システムがインセンティブの調整に失敗しているからである。これらの問題を解決するためには、先着順の予約方式を避け、抽選制・完全年齢順・割当制のいずれかを採用することが望ましい。
また、予約受付時の混雑を緩和するためには、ネット予約の勧奨も効果的である。さらに、個別接種の予約管理に対しては自治体による代行制度の導入を検討すべきである。そのうえで、ワクチン接種希望日の集中を減らすために、ワクチン休暇の取得について政府がモデル就業規則を定め、経済界に広く勧奨すべきである。
接種予約システムの具体的な改善相談については、東京大学のマーケットデザインセンター(email: market-design@e.u-tokyo.ac.jp)および慶應義塾大学のマーケットデザイン研究センター(email: keio.market.design@gmail.com)で受け付けている。予約システムの設計に課題を抱える自治体・ITベンダーの方は、ぜひ相談していただきたい。
多くの自治体が採用している先着順の予約方式には問題点が多い。ワクチン接種希望者が多い場合に、先着順で接種予約を取るシステムを用いると、受付開始と同時に、多数の人が電話やネットで予約を取ろうとする。一時に予約が集中するので、電話回線やインターネットの回線がダウンしてしまう。
そのために、接種希望者たちは、電話をかけ続けたり、コンピューターやスマートフォンの反応を待ち続けたりする。長時間待ち続けても予約を取れる人は一部で、多数の人は予約が取れない。先着順という予約システムのために、予約にかける国民の時間だけでなく、自治体職員の人員と労働時間、電話回線費用、予約システムのサーバーの増強費用などが無駄になっている。また、先着順は公平性の観点からも望ましくない。予約を先着順にすると、手伝ってくれる家族がいる人やネット環境が良い人が有利になる。