これらの問題は、予約の混雑につけ入り、大量の予約枠を確保する悪質な予約代行業者が活動し始めると、より深刻になる。予約システムの脆弱性を晒さないため、あえて詳細な手順の説明は避けるが、先着順の予約方式は悪質な代行業者の搾取に弱い。実際、世界各国の先着順を採用する公共サービスの予約で、代行業者の横行が観察されている。
この問題は、予約を行う段階で身元確認を行わず、単一の人間が多重に予約を取れるシステムのもとで特に深刻となる。これらの代行業者の活動は、予約システムに多大な負荷をかけ、自治体や接種希望者のリソースを浪費させることとなり、接種希望者間での公平性を損なうので、社会的に望ましくない。
こうした無駄や不公平を防ぐために、以下の3つの予約方式のいずれかを採用するべきである。
抽選・完全年齢順・割当制の採用を
接種対象者別に、いつ、どこで接種を受けたいかという(複数の)希望を電話やインターネットで受け付ける。一定期間ごとに年齢や基礎疾患などの優先度を考慮した抽選で申込者に優先順位を付けて、優先順位の高い順に予約枠を割り振っていく。キャンセルがあった場合には、予約システム内でキャンセルがあった時間帯の再予約はせず、次の期間にまわす。あるいは、最初に仮予約を受け付けておいて、(抽選等の後に)正式予約ができる段階になると、メールやショートメッセージで通知を送り、正式予約を受け付けるという方式も考えられる。
接種者に選ばれるかどうかは、早く申し込みをしたかどうかに依存しないため、この方法のもとでは先ほど指摘した予約システムにかかる負担や無駄を回避することができる点がメリットである。一方で、抽選システムが公正に運営されているかどうかに対する疑念が生じる可能性が、抽選方式の問題点である。例えば、接種券の番号の下2桁や3桁を用いるなど、予約の割り振りが公正に行われているかどうかがわかりやすくなる工夫を施すことで対処できる。
先着順の問題点は、早く申し込みたいというインセンティブにあり、これを排除できるなら予約の割り振りは抽選制以外の方法で行ってもよい。抽選制を少し改変し、抽選の代わりに生年月日の順などから優先順位を作り、予約を割り振っても、同様に先着順の弱点を克服することができる。この場合、予約の割り振り自体にクジは一切用いないため、抽選システムの公正性に対する疑義は生じないというメリットがある。
あらかじめ、個人別に接種場所、接種日時を割り当てて、接種対象者に通知する。接種日、場所の変更を希望する人、接種そのものを希望しない人は、電話やインターネットで連絡をする。この方式のメリットは、予約に時間がかかることや手続きが複雑なことを嫌う人でも接種へと誘いやすいことである。問題点は、接種を希望しないにもかかわらず接種を断る手続きをしない人の比率が高い場合、キャンセルによって生じたワクチンや接種時間の無駄が発生する可能性が高くなることである。