米国の「ミドルクラスのための外交」って何だろう これからの日本も見習ったほうがいいのかも?

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それではこれまでのアメリカ外交は、ミドルクラスにとってどうだっただろうか。報告書は過去のいろんなタイプの外交方針を取り上げ、そのいずれもが彼らに利益をもたらしてこなかったと断じている。

ここでトランプ流の「アメリカファースト」外交や、急進左派が掲げる「気候変動・超重視」外交が否定されているのは、まあ理解できる。関税を引き上げて他国に貿易戦争を仕掛けると、国民負担が増加してミドルクラスにはマイナスだろう。また、「化石燃料をゼロにせよ!」と徹底すると、じゃあ石油や石炭産業に勤めるミドルクラスはどうなってもいいのか、ということになってしまう。

どうやったら外交で個人を助けられるのか?

筆者にとって興味深かったのは、ここで「プロビジネス外交」や「プログローバル化外交」が否定されていることだ。つまりグローバル化を促進し、大企業を利するような外交をやっていると、ミドルクラスのためにならない、というのである。

かつて「GMにとって良いことは、アメリカにとって良いことである」と自動車会社の経営者が豪語した時代があった。企業の繁栄が国家に富をもたらし、それがそのまま個人の幸福につながった古き良き時代のことである。が、今やそんなセリフはまったくリアリティーがない(そもそもGMはリーマンショック時に経営破綻して、政府に救済されている)。

GAFAなどのグローバル企業がいかに業績を拡大しても、収益はどこかへ行ってしまい、税収はさほど上がらない。彼らは製造や研究の拠点を海外に移転し、国内の雇用や賃金を上げることに関心が薄い。つまり企業と国家と個人の利益が、今では昔ほど重ならなくなってしまった。

しかし国家としては、ここは悩ましいところだ。外交政策によって、自国企業を支援することはできるけれども、個人を助けるにはどうしたらいいのだろう? 例えば、自由貿易協定で利益を得るのは企業であって、ミドルクラスではないだろう。だとすれば、アメリカのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)復帰はもはや不可能、ということになってしまう。

あるいは、「これから先のアメリカ外交が目指すのは、ミドルクラスの雇用や賃金を上げることであります」と言われると、やはりそこには異和感がある。それでは結局、「アメリカファースト」主義や「バイアメリカン」(アメリカ製品愛用)政策など、トランプ路線と大差がないことになってしまわないだろうか。

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