アメリカのジョー・バイデン大統領はつくづく運が強い。「最初の100日以内にワクチン接種2億回」という公約を、予定より1週間早く達成した。同国の成人人口において、「ワクチンを1回以上接種した比率」は本稿執筆時点ですでに58.7%に達している 。
残っているのはワクチン接種に消極的な人が多いので、今後の伸びは緩やかなものになりそうだが、「独立記念日(7月4日)までに集団免疫の獲得」という目標は、十分に視野に入ってきた。
それに比べて、わが国のワクチン接種状況の情けないことよ。筆者はつい先ほど、アメリカの知人から「東京五輪を楽しみにしているからね」というメールをもらい、どう返事を書いたものかと悩んでいるところだ。
なぜ「ミドルクラス」と「外交」なのか
さて、今回はバイデン外交についてご紹介したい。いろいろな場所で「America is back!(アメリカは帰ってきたぞ!)」と広言し、世界的な指導力回復に意欲を見せるバイデン氏だが、外交演説の際にかならず発信するフレーズがある。それは「ミドルクラスのための外交政策」(A Foreign Policy for the Middle Class)だ。
えっ?「ミドルクラスのための経済政策」というのならわかるが、なんで外交なんだ?と思ったあなたはたぶん間違っていない。このフレーズをどう理解すべきなのか、正直、世界の外交・安全保障の専門家たちが悩ましく感じているところなのだ。もっともこういう目標を掲げなければならない今のアメリカの現状も理解できるので、それは経済学や社会学的に見ても興味深い現象だと思うのだ。
バイデン大統領が、この問題を重く受け止めていることは間違いない。というのは、「ミドルクラスのための外交政策」にはネタ本がある。2020年9月にシンクタンク、カーネギー国際平和財団がまとめた”Making U.S. Foreign Policy Work Better for the Middle Class”(アメリカ外交を中間層のために働かせる)という報告書がそれだ 。
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