執筆メンバーの中にはジェイク・サリバンの名がある。彼は副大統領時代のバイデン氏の補佐官を務め、現政権では国家安全保障担当補佐官に起用されている。他のメンバーではサルマン・アーメッドが、国務省の政策企画室長に任命されている。つまりバイデン政権はこのアイデアを丸ごと買い取って、自分の外交スタッフに登用しているのである。
アメリカのミドルクラスとは?
この研究が始まったのは2017年のこと。察するにトランプ政権が誕生したことで、外交専門家たちが危機感を抱いたのであろう。彼らは「国民の多数(ミドルクラス)に支持されていない外交は持続不可能だ」ということが身に染みた。
そこで国民の意識調査を始めるわけだが、民主党支持が多いコロラド州、共和党支持が多いネブラスカ州、接戦州であるオハイオ州という3カ所でヒアリングを行った。つまりこの研究はもともと超党派であり、最初からバイデン政権に向けた政策提言ではなかったことがわかる。
それでは今のアメリカにおいて、ミドルクラスとはどの程度の所得層を意味するのだろうか。報告書はキチンと定義していて、「世帯収入の中央値の3分の2から2倍まで」ということになっている。
2018年時点で世帯中央値は7万4600ドルなので、下は4万8505ドルから上は14万5516ドルということになる。円換算してボトムが約500万円と考えると、「意外と高いな」という印象を受けるところだ。これはアメリカで物価が上昇しているためなのか、それとも為替レートが円安になっているからなのか。
同じことを日本で考えてみると、世帯年収の平均値が約550万円なので、ざっくり年間336万円から1100万円の世帯がミドルクラスという定義になる。まあ、妥当な線であろう。
ちなみにこの手の統計で、なぜアメリカは中央値で日本は平均値を使うかと言うと、アメリカには途方もないお金持ちがいるので、平均値が吊り上げられてしまうのだ。余談ながらマイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏やアマゾン・ドット・コム社の最高経営責任者であるジェフ・ベゾス氏は「お金があるのに離婚する」のではなく「財産がありすぎるから離婚してしまう」と考えるほうが自然であろう。
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