最近、個人投資家の間で「FIRE」と言う言葉がはやっている。「Financial Independence, Retire Early」の略語だという。要は、早期にリタイアができるような金融的独立性、すなわち十分な資産額の形成のことだ。
なぜ日本の若者は人一倍「FIRE」に興味を持つのか
「私は、一応FIREを達成しましたよ」「FIREまであと少しのところまで来ました」「僕もFIREを目指して頑張ります」……、のような感じでポジティブな意味に使われる。投資に熱心な多くの若者にとっては、「憧れ」ないし「目標」となっている。
投資の目的として「金融的な独立性」を強調する話法は、投資家の間にも、金融・不動産などの営業マンのセールストークとしても、かなり昔からあった。ただこれを「早期リタイア」と強く結びつけるようになったのが近年の傾向だ。
もちろん、お金はよりたくさんあって悪いものではないので、一つの到達点ないし通過点としてFIREを意識することに非合理性はないのだが、「FIREを目指す」と強く言う若者には興味が湧く。なぜだろうか。
なお念のためだが、FIREは語義からわかるとおり、せいぜい40歳くらいまでの若者が目指すものであって、中高年が「金融的独立」を目指すのはいいことだが、「FIREを目指している」と自称するといささかイタい。中高年の場合は、単なる老後不安だ。
さて、今、特にFIREへの関心が高まった理由は、日本の若者の「仕事」に対する期待感が、かつてよりも低下しているからだろう。
過去20年以上にわたってわが国は経済成長率が低下し、勤労者の賃金の伸びがごく鈍い。加えて、産業構造の情報化に相対的な遅れを来し、企業では高齢者がポストを占有して組織が目詰まりを起こしている。
若い世代の勤労者は、将来の所得の増加、昇進、さらには雇用の継続に対して期待や確信を持てない。せめて金融資産だけでもしっかりと確保して、将来の安心を得たいという気持ちを抱くのはわからなくもない。
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