現在、年金基金などの機関投資家が運用計画に使う内外の株式の期待リターンは、無リスク金利に5%のリスクプレミアムを乗せたくらいの数字なのだが、今や無リスク金利はほぼゼロパーセントなので、名目の期待リターンが5%となるが、運用益に対する税率は現在約20%なので、「4%」くらいが現実的に期待できる運用利回りだ。
内外の書籍では、株式のインデックスファンドの利回りに7~8%くらいを期待し、十分な資産額を作った後は債券を4~5割くらい組み合わせて(例えば、株式6割、債券4割)運用資産のリスクをいくらか低下させた状態にする。そのうえで年率4%くらいのリターンが期待できるので、資産額の4%を引き出すといい、といった水準の数字が紹介されることが多い。
しかし、これは、アメリカなどの金利が今よりも高く、加えて長期的にアメリカの株価が上昇し続けた時期を参照した数字なので、「過去を直接将来にあてはめるのは乱暴だ」との批判を免れない。
何と言っても、無リスク金利のレベルが大きく異なるのだから、「昔の平均」をそのまま当てはめてはいけない。金利水準が高かった大昔のようには「金利生活者」になることが難しいのと同じ理屈だ。
「資産の累積過程では年率4%で資産を増やし、その後も株価指数並みのリスクを負担しながらの4%の収益で暮らすのだ」というくらいを、「低金利時代のFIRE」の現実的な目指し方だとイメージしておくといい。
「人的資本vs.金融資産」
具体的な数字で考えてみよう。手取りの収入が500万円として、次のようなイメージだ。
「手取り収入の半分である年間250万円で生活して、毎年250万円を投資に回す。約18年後に資産が6250万円に達して、その後、この資産の運用益である250万円で暮らすと、資産は減らない」。もちろん、運用利回りは毎年変化するし、長年を通じてこれよりも高いかもしれないし、低いかもしれない。いかがだろうか。
18年間が必要なのだとすると、25歳から始めて43歳でFIRE、開始が30歳なら48歳でFIREだ。40代でリタイアするのだとすれば、確かに早い。
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