「発達障害の上司」から心を守るためにできること 深刻化する「カサンドラ症候群」の実態
4都府県に出されていた緊急事態宣言の延長が5月31日までと決まり、いよいよオリンピック開催か中止かの決断が下される日が近づいている。国は引き続き感染防止を訴え、リモートワークを推進しているが、対応が困難な業種は、これまでのように連日通勤ラッシュに揉まれて出社しているのが現状だ。
新型コロナウイルスの影響が長引き、新たなワークスタイルに移行している中、これまでの行動様式をなかなか変えられない人たちも多く、特に管理職以上に多く見られるという。
リモート会議が増えたため、部下と思ったように意思疎通が図れず、そのストレスが家庭内に持ちこまれた結果、妻(もしくは夫)が心身の体調を崩すに陥るケースも増えている。
こうした中、「カサンドラ症候群」の問題も深刻化している。「カサンドラ症候群」とは診断名や病名ではなく、イギリスの心理学者、マクシーン・アストンが提唱した概念で、ギリシャ神話に出てくる悲劇の預言者の名前からきている。「アスペルガー症候群」(以下ASD)の夫(もしくは妻)と情緒的な相互関係が築けないため、妻に生じる身体や精神的症状を表す言葉で、2003年に研究発表されたものだ。
周囲のほうが心身のバランスを崩してしまう
発達障害の一つである「ASD(自閉症スペクトラム)」の特性である「社会性の未熟さ」「コミュニケーションの苦手さ」「想像することの苦手さ」に振り回されると、無力感、孤独感、絶望感によって、偏頭痛、体重の増減、自己評価の低下、パニック障害、抑うつ、無気力などの状態を引き起こす。その症状が「カサンドラ症候群」と呼ばれている。
「カサンドラ症候群」は概念であり正式病名ではないため、なかなか周囲に理解されにくい。ASDの上司による「パワハラ」「モラハラ」によって心身のバランスを崩してしまう症状は、「カサンドラ症候群」と似ており、夫婦間だけでなく、職場でも起こっている大きな問題だ。
そこで30年以上に渡って発達障害の研究、治療を続け、『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために』を出版した「どんぐり発達クリニック」の精神科医、宮尾益知先生に、ASDの上司に対してどう対処するのがよいのかを訊いてみた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら