メスがオスを選ぶのが動物一般の大原則--『女は男の指を見る』を書いた竹内久美子氏(動物行動学研究家)に聞く
男は、実は女に選ばれている。人の好みや魅力、相性には正体があり、それは「遺伝子の企み」に牛耳られている。数々の実験や最新データを基に動物行動学によって、本書で常識が覆されていくが……。
--初対面で、女性は男性の指が気になるものなのですか。
指を見てゾクッとしたり、セクシーだなと感じたりする。アンケートをとると、顔よりも、指という些細なパーツが気になるという。この「できる」印といえる指の研究は、ここ10年ですごく進んだ。
最初は動物行動学の範囲内で、主にイギリスのジョン・T・マニングが研究していた。それが心理学や生理学に波及して、私も考えを再確認し、再構築することができた。
--指には「できる」印がある?
マニングの研究にHox遺伝子が登場する。母胎の中で受精卵が細胞分裂を繰り返しながらだんだん動物らしい形になっていくときに、その形作りに重要な役割をはたしているのがHox遺伝子。面白いのは、胴体の末端である生殖器や泌尿器を作るHox遺伝子が、同時に手や足の指という末端部作りをつかさどる。その仕組みを知ったときに、指が気になるのは遺伝子が共通だからとわかった。
--指で能力差もわかる?
指比(薬指の長さに対する人差し指の長さ)の値が低いほど、胎児期にテストステロン(男性ホルモンの代表格)のレベルが高かったと考えられ、その人は大人になってもおおむね高い。この現象を利用した研究で、たとえば、プロサッカー選手、交響楽団の楽団員は、指比が低い、つまり薬指が相対的に長いことがわかっている。
最近ロンドンで、生理学者による株のトレーダーについての研究が明らかになった。指比の低いグループと高いグループでは収益に1ケタもの差が出る。トレーダーとして、薬指の長い、つまり右脳の空間認識力が高い人は業績がいいという。うそかと思うような研究結果が出てきた。