(第14回)巨額の対外資産の極まりなく愚かな運用

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 第一に、日本は収益が結局はゼロになる投資をしていた。10年間資産を保有して、少しも増えなかったのだ。世界経済はこの間に目覚ましく成長したのだから、これが最善の方法だったとは到底言えない。海外資産の運用をもっと適切な方法で行うことは十分可能だったはずだ。

日本の対外資産の利回りを評価するため、具体的な比較対象を示そう。アメリカの短期国債(TB)と10年債の利回りは、表の右半分に示すとおりだ。

これから明白なように、日本の対外資産は、10年債より低い利回りしか実現していない。アメリカ国債は極めて安全な資産なのだから、これは信じられないような結果だ。

しばしば日本の外貨準備のかなりの部分がTBで運用されていると言われる。表を見ると、確かに両者の利回りがあまり違わない年が多い。TBは安全であるばかりでなく流動性も極めて高い。しかし、こんな運用なら、素人でもできる。と言うよりは、素人でもしない愚かな運用だ。

「日本の外貨準備は、収益を犠牲にして、最も安全な方法で運用されている」というコメントがしばしば財務省からなされた。しかし、「TBが安全」というのは、アメリカ人の立場から見た場合のことである。日本人が資産をドル資産に集中し、しかも低利回りの資産で満足していたというのは、まったく信じられないほどの愚かな行為なのである。

ファイナンス理論の知見を使っていない

「日本の対外資産運用に改善の余地があった」ことは、逆の面から見ても、つまりアメリカ側から見ても言える。それは次のようなことだ。

アメリカの対外純資産はマイナスなのだが、所得収支は黒字なのである。つまり、アメリカはマイナスからプラスを生み出している(詳細は、拙著『経済危機のルーツ』第4章を参照)。

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