外資系管理職の「判断力」を短期で高める学習法 「検討する」が常套句の管理職は消えていく
外資系企業の駐日代表をながらく務めてきた坂口さん(仮名)は、若手の頃から次のようなことを実践してきたそうです。
職場に、迅速かつ的確な判断で仕事をスピーディーに進めている「できる先輩」がいたとします。その先輩がある案件に対して何らかの判断を下したとき、それが直接自分の仕事ではなくても、どのような根拠でその判断を行ったのかを自分なりに考えてみる。そのうえで、自分の仮説を本人にぶつけて答え合わせをするのです。
このような仮説・検証を繰り返しながら「できる人」の思考プロセスを学び、それを自分の仕事の中へと取り込んできたとのことです。「できる人」の脳を合法的にハッキングすることで成長を加速させようとする坂口さんの高速学習メソッドです。
「判断の疑似体験」の機会をつくる
坂口さんがとくに強調したのは、必ず自分なりの仮説を立ててみるという点です。自分を判断の当事者だと仮定することで「判断の疑似体験」ができるからです。
ゴルフのスイングを上達させるためには、自分で何度もスイングをする必要があります。同じように、判断力を上達させるためには、自分で何度も判断をする必要がありあます。話を聞いたり、本を読んだとしても、現実のヒリヒリするような緊張感の中での判断経験を積み上げていかなければ、「知っている」が「できる」に進化することはありません。
坂口さんは、たとえ自分の仕事ではなくても実際に起きている案件を学習教材として、少しでも実践に近い判断を疑似体験しようとしているのです。
だからこそ、「いまの判断の根拠となったのは○○ということでしょうか」と、自分の仮説をぶつけてみたうえで本人の答えを聞くことが大切なのです。単に答えを教えてもらうだけでは、人のスイングを見ているだけです。
実は私は一時期、この坂口さんの部下だったことがあります。そのとき彼は、同じアプローチで私の判断をトレーニングしてくれました。坂口さんがある案件で何らかの判断をしたあと、私に向かって「なぜこのような判断をしたと思う?」と必ず問いかけてくれたのです。
知恵を絞って仮説を立て、それを伝えたあとに正解を教えてもらうのですが、最初はピント外れな回答しかできません。しかし、このやりとりを何度か繰り返しているうちに、徐々に、「ピンポン、正解!」と言ってもらえることが増えてきました。
坂口さんの頭の中の思考プロセスが理解できるようになってきたのです。このときに鍛えていただいた判断力が、のちに私が管理職としてチーム運営を行うときにどれだけ役に立ったか計り知れません。
このように、目の前で起きている実際の案件を教材として、①相手の判断の裏にある思考プロセスや判断基準に対して仮説を立てる、②相手から正解を聞き仮説と照らし合わせる、③どこが間違っていたのかを検証しながら学ぶべきことを整理し、自分の仕事に反映させる――これが、仕事の成果を左右するほどの判断力を短期間で高める疑似体験学習です。
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