外資系管理職の「判断力」を短期で高める学習法 「検討する」が常套句の管理職は消えていく

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この方法を効果的に実践していくために注意すべき点が3つあります。1つ目は、自分よりも一段上の仕事をしている「できる人」から学ぶことです。例えば、自分がスタッフであれば、できる主任から、主任であればできる課長から、課長であればできる部長から。

一段上の人の判断に対して自分なりの仮説を立てようとすると、視点を一段高いところに置いて仕事を見る必要があります。それによって視野が広がり、普段行っている仕事だけでは見えないものが見えてくるのです。

さらに、対象とする人を間違えないことも大切です。判断に切れがなく、仕事もパッとしない上司や先輩から反面教師的に学ぶよりも、「これぞ!」と思う人に学習エネルギーを集中させたほうが学習効率は高まります。

自分らしい判断スタイルが価値を生む

2つ目の注意点は、厳しい判断局面ほどしっかりと仮説を立てるということです。

どのような選択をしても失うものがある場合、いま決めなければ問題が拡大するような場合、本人が責任を問われるかもしれない場合――そのようなときにこそ、「できる人」は「さすが」と思わせるような上質の判断をします。

いずれ自分が同様の局面に立たされたとき、決めることができずに右往左往しないためにも、厳しい局面での上質の判断はどのような思考プロセスから生まれるのかをしっかりと学習する機会です。

3つ目の注意点は、自分らしい判断スタイルを形成することです。人の仕事で判断の疑似体験をさせてもらいながらも、最終的には自分の仕事で自分の判断を繰り返し、自分の判断スタイルを築いていくことが大切です。

たった1つの「決める」という行動でも、その裏には、そこに至るまでの過程や背景、優先順位の考え方、周囲への影響などを含めて実にたくさんの情報が存在しています。それを踏まえたうえで、「決める」には自分が大切にしている考え方や価値観が反映されます。

人から学びながらも、いい意味で「○○さんらしい判断ですね」と言われるような判断スタイルを持ち、自信を持ってそれを実行することが、あなたならではの価値です。

これからの時代、仕事をしながらなんとなく成長している人と、意図を持って成長を図っている人との間には、ますます大きな差がついてきます。「できる人」の力を借りて判断の疑似体験を意図的に行うことで、正解のない問題に取り組む時代に必要な判断力を短期間で高めていく――変化の時代を共に生きるあなたのヒントになればと思います。

櫻田 毅 人材活性ビジネスコーチ

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さくらだ たけし / Takeshi Sakurada

アークス&コーチング代表。九州大学大学院工学研究科修了後、三井造船で深海調査船の開発に従事。日興證券(当時)での投資開発課長、投資技術研究室長などを経て、米系資産運用会社ラッセル・インベストメントで資産運用コンサルティング部長。その後、執行役COO(最高執行責任者)として米国人CEO(最高経営責任者)と共に経営に携わる。2010年に独立後、研修や講演などを通じて年間約1500人のビジネスパーソンの成長支援に関わる。近著に『管理職1年目の教科書』(東洋経済新報社)がある。

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