菅首相、「最低会見」で遠のく五輪開催への道

緊急事態の解除条件示せず、広がる五輪中止論

さらに、菅首相は「東京五輪の開催に向け、ファイザー社などから出場する各国・地域の選手団に無償でワクチンの提供の申し出を受けた」と誇らしげに説明。「当然、日本の選手団にも接種をしたい。そういう方向になるだろう」と語った。ただ、具体的な接種開始時期などには踏み込まなかった。

ワクチン接種にはさまざまな副反応が起こるだけに、「体調管理に極めて敏感な選手たちにとって、接種への不安は一般国民よりはるかに大きい」(五輪関係者)のは常識だ。しかも、2回の接種によって抗体ができるまでには約1カ月かかることから、「どんなに遅れても、5月中には1回目の接種を済ませる必要がある」(同)とみられているが、政府は期限も示していない。

「優先接種」に相次ぐ困惑の声

一方で、国民の間には「アスリートファーストは理解できるが、特別扱いには抵抗がある」との声も少なくない。五輪参加が決まっている有力選手からも「選手としては接種を受けたいが、一国民の立場からは優先接種に抵抗がある」などと困惑の声が相次ぐ。

そうした状況も国民の間での五輪中止・延期論を加速させている。日本弁護士連合会の元会長である宇都宮健児弁護士は5日、署名サイトを通じて「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」と国民に呼び掛け、数日間で数十万筆に達した。

こうした世論も選手への強い圧迫となっている。白血病による長期療養を経て東京五輪代表入りを決めた競泳の池江璃花子選手も7日、五輪への反対などの声が寄せられていることについて、ツイッターで「この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。私は何も変えることができません」と苦悩する思いを書き込んだ。

今回の宣言延長で最大の注目は「5月末の期限で解除できるのか」(閣僚経験者)という点だ。菅首相は会見などで「まず、感染爆発状態のステージ4から脱却することが重要」とあいまいな表現を繰り返した。これに対し、政府分科会の尾身茂会長は「今回は変異株が極めて重要な要素だ。解除は今まで以上に慎重にやる必要がある」と語った。

尾身氏が解除の基準として挙げたのは、感染状況がステージ4を脱し、安定的な下降傾向を示すことや逼迫する医療提供体制の改善などだ。そのうえで「下げ止まってすぐに解除すると、リバウンドが来る。2~3週間はぐっと我慢することが必要だ」と力説した。これを現状に当てはめると、連休後も感染増加が際立つ東京では、「解除まで最低1カ月が必要」(都幹部)ということになる。

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