菅首相、「最低会見」で遠のく五輪開催への道 緊急事態の解除条件示せず、広がる五輪中止論

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大型連休明けの週末となった8日の国内の新規感染者数は約4カ月ぶりに7000人の大台を超えた。1日当たりの新規感染者としてはこれまでで4番目に多く、重症者は過去最多の1131人、死者は計86人と事態の深刻化が際立つ。

東京の新規感染者1121人は約3カ月半ぶりの数字で、1021人だった大阪府を上回った。岡山や広島、熊本など計14道県で過去最多となるなど、感染は全国に拡大している。

国会では10日、菅首相も出席しての衆参両院予算委の集中審議が実施された。午前の衆院予算委では立憲民主党の枝野幸男代表が宣言延長について、「根拠なき楽観論で対応が遅れ、同じ失敗を繰り返してきた」と厳しく批判したが、菅首相は「客観的な数値で専門家の意見を聞いて判断している」とメモを読みながら反論した。

政府のコロナ対応評価は最低に

枝野氏は東京五輪についても「現状をみる限り、判断は先送りできない」と中止の決断を求めたが、菅首相は「安全安心な大会に向け全力を尽くす」との文言を呪文のように繰り返すだけ。コロナ対応と五輪開催の可否については結局、「お定まりの政府と野党の押し問答」(閣僚経験者)に終始した。

10日に相次いで公表された世論調査によると、下げ止まっていた内閣支持率は数ポイント下落し、不支持率が上昇。政府のコロナ対応の評価はいずれも20%台と政権発足後最低となった。菅首相が打ち出す「高齢者へのワクチン接種7月完了」についても「できるとは思わない」が7割以上となった。

与党内では「もはやワクチン接種と五輪開催の可否で政権の命運が決まる」(自民長老)との見方が急速に広がっている。「ワクチン接種が目標より遅れ、感染拡大が続く中での五輪開催となれば、国民の政権への不満が爆発する」(同)という判断からだ。

これに絡んで政界関係者の間では「五輪主催者の小池百合子東京都知事が、6月1日の都議会初日で五輪開催中止をぶち上げる」とのうわさまで飛びかう。10日の参院予算委で立憲民主の蓮舫代表代行が「小池さんが五輪中止を言い出すという話もあるが」と水を向けたが、菅首相は「お答えする立場にない」と苦笑いでかわした。

ただ、永田町では「そんな『ポスト菅』絡みでの政局的観測が広がること自体が菅政権の末期症状の表れ」(同)との声も多い。宣言の期限が切れる5月末までが「菅首相の命運を左右する3週間」(自民幹部)となるのは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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