苦境続くタクシー業界「配車アプリ」は救世主か コロナ禍で利用増、最大手トップが語る今後

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――コロナ禍における配車アプリ市場の動向をどう捉えていますか。

GOの利用件数は、JapanTaxiとMOVを合算した利用件数の過去最高を昨年10月に上回り、以降も好調な伸びが続いています。アンケートなどの市場調査の結果、伸びている理由は2つあり、いずれも背景にはコロナ禍でユーザーの消費者行動が変化したことがあります。

中島 宏(なかじま・ひろし)/大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAへ入社。2009年4月執行役員に就任し、新規事業推進室長、HR本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任。執行役員オートモーティブ事業本部長を経て、現職(筆者撮影)

――具体的な変化とは?

1つは非接触が好まれるということ。電車よりもタクシーは密集度が低く、さらにアプリだと非接触決済が可能です。

もう1つは流しのタクシーの利用の際にも、路上での接触を減らす目的でアプリ配車の割合が増えてきたことが挙げられます。これまでの電話予約や流しの領域にアプリが食い込んできている。

これまでの傾向から、一度アプリに流れると使い続け定着してもらえることはわかっていました。そのため各社は、初回ユーザーへのアプローチに苦心していた。それが今はユーザーから能動的にアプリに来てもらっているという状態です。

コロナ禍でアプリによる配車が増加

東京タクシーの売り上げの占める割合は、流しが約5割、配車が残り5割程度といわれていますが、2020年の時点でアプリ配車が売り上げ全体に占める割合は、東京のタクシー全体のわずか2%にすぎなかったんです。

しかし、コロナ禍や外的要因を理由にその数字がこの1年間で上がっています(具体的な数字は非公表)。これはコロナ禍でタクシー業界全体の売り上げが大幅に減少したことも影響していますが、近い将来10%に近い数字に近づくとみています。

――とはいえ、タクシー業界にIT化をすすめるのはハード面でも心理的な部分でもハードルが高い気がします。

いちばん苦労したのが、アプリの導入によって20年、30年と続いてきた業務フローの変化に抵抗を感じる企業が多かったことです。そこに、2013年にUberが日本に上陸する「ウーバーショック」が起きた。IT化に対応していかないと必要とされなくなってしまうんじゃないか、という危機感が企業側に生まれたのが第1弾のショックです。

次ページ第2弾は「コロナショック」
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