マカオを支える「総量規制」と「クラスター」 交通インフラ整備でまだまだ発展の余地

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半島の伝統的なカジノホテルの場合、訪問者の目的はカジノゲームをすることです。一方、コタイ地区のIRでは多くのファミリーを見ることができます。コタイ地区のIRの場合、訪問客がカジノに訪問する比率は、おおむね6割前後と推定されています。

マカオでは、カジノ、IRの開発に合わせて、交通インフラの整備も進んでいます。マカオと中国本土との高速鉄道の接続、マカオ、香港、広東省の3地域を結ぶ海上橋の建設などです。IRの建設ラッシュ、中国の経済成長、交通インフラの拡充が三位一体となり、マカオのカジノゲーミング市場は中期的にも高成長を持続する見通しです。

マカオ政府が総量を管理

Melco Crown Entertainment(中国、オーストラリア資本主体)のカジノ施設の入り口

マカオにおけるカジノ運営の特徴は、政府が総量管理を行っていること、クラスター効果(集積効果)を発揮していることです。

マカオ政府は施設拡張、カジノのテーブル数など設備量を管理しています。中国という単一大型経済圏で、供給がコントロールされているため、カジノ事業の唯一の収支リスクである過当競争の懸念がありません。ゆえに、事業者は半永久的に高い業績を期待できます。実際、6事業者の営業利益の合計は年間6000億円ですが、すべての事業者が巨大な利益を確保しています。

もう一つの特徴は、クラスター効果です。世田谷区の半分という狭いエリアの中で6事業者が集客と開発競争を繰り広げる結果、訪問者はエリア内を回遊し、各社の多様なアトラクションを一度の滞在で体験できます。また、事業者、施設が沢山ありますので、スクラップ&ビルドも容易で、常に新鮮な魅力を提供できます。

カジノ推進の政策目的には、税収確保、地域経済の活性化、インバウンド観光の促進、文化や産業の魅力の発信(コンベンション施設運営を含む)などがあります。マカオでは、このうち税収確保、地域経済の活性化に重点が置かれています。一方、日本ではインバウンド観光の促進、文化や産業の魅力の発信、すなわちクールジャパン、ビジットジャパンの推進に重点を置く予定であり、おのずと注力するポイントは異なります。

日本においても、政府が総量を管理する方向です。これによりコンセッションを得た事業者の高収益を保証することになりますので、事業者には日本への再投資という義務が発生します。ただし日本ではマカオのような集積エリアを構築せず、単独のIRを全国に最大10カ所ほど設置する考えです(IR議連の考え方)。すなわち、各IRは地域社会(産業、観光資源、インフラ)との協力関係、信頼関係を築くことが求められています。

小池 隆由 キャピタル&イノベーション代表取締役

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こいけ たかよし / Takayoshi Koike

1991年山一證券入社。山之内製薬などを経て、2005年にドイツ証券、2010年にゴールドマン・サックス証券に入社。証券アナリストとして、メディア、エンターテインメント、インターネット産業を担当。2012年に、ウォール・ストリート・ジャーナルが選ぶアナリストランキングにてメディア部門でアジア第1位。2013年9月、キャピタル&イノベーション株式会社を設立。カジノを含む統合リゾート(IR)整備に向け経済界への啓発に注力する。e-mail : koike@capital-innovation.biz

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