ハイローラーも焦る、新M&Aラッシュ すでに次のターゲットを見据えているのか
ネット業界は今、M&Aラッシュのさなかにある。2月19日にマーク・ザッカーバーグCEO率いるフェイスブックは、社員数わずか50人のメッセージングアプリ企業「ワッツアップ」を1.9兆円で買収すると発表。新たな「ハイローラー(高額の賭けを行うギャンブラー)」の登場に、世界中が度肝を抜かれた。
ネット企業が続々誕生
フェイスブックだけでない。マイクロソフト、グーグル、アマゾンなどキャッシュリッチな企業は盛んにM&Aに乗り出している。カール・アイカーン氏を代表とする物言う株主が「保有するキャッシュを有効に使わないのであればすべて配当せよ」と圧力を強めていることもあり、買う側が自然にヒートアップしている。
買われる側の要因もある。ワッツアップだけでなく、シリコンバレーでは次々と新しいスマホアプリのベンチャーが湧き起こっているのだ。宿泊仲介サービスのエアB&B、6秒動画を共有するヴァインなど、枚挙にいとまがない。次々と有望なネット企業が現れた2000年前後を彷彿とさせる。
スプリントの買収に1.8兆円を投じたばかり、というタイミングであっても、ソフトバンクの元には、今でもM&A話が引きも切らない。
「米国だけでなく、インドやイスラエルなどさまざまな国からアプリ系企業の案件が持ち込まれ、ソフトバンクのM&A部隊はさばききれないらしい」(日本の携帯販社幹部)。ソフトバンク周辺からはそんなうわさも漏れ伝わる。M&Aブームが熱を帯びると、証券会社などは絶好の商機と見て、複数の投資案件をぶら下げて事業会社を行脚する。結果、同業他社なら誰もが知る売り物が出回る。
ソフトバンクの場合、こうした証券会社経由の“ありきたりな”案件とは別のルートがある。「孫正義という人物に対して、起業家や経営陣が直接売り込みに来る」(ソフトバンク幹部)からだ。
「いつも度胸のよさには参ってしまう」(柳井正ファーストリテイリング会長兼社長)。企業規模が拡大してもなお、果敢な買収に打って出る名うてのハイローラーへの注目度は高いままだ。