「ダイバーシティ」の目的は多様性を企業の成長に結びつけること--第3回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション
女性活躍推進の取り組みは2005年から始めました。2004年に鈴木(茂晴氏)が執行役社長(CEO)に就任後、社員の退職事由を見て、結婚、出産、育児といった理由で辞めている女性社員が多いことがわかりました。そこで、「まずは女性が辞めない会社にしよう」ということになりました。最初は育児との両立支援を中心として、制度の見直しと拡充、制度を使いやすいようにするための環境づくりに着手しました。
取り組みを行う中で「女性だけでなく男性の働き方も見直す必要がある」ということになり、2007年6月から「19時前退社の励行」をスタートしました。毎日、原則として19時までに退社するというもので、当初は支店長や部室長から反発もありました。
しかし徹底してやっていきたいという思いがあり、毎日、全国の支店や本部の部署から報告を求め、その内容を社長をはじめとする役員全員にも送付しました。守れないマネジャーには、社長の指示を受けて「社長がすべて見ています」と伝えました。
本気で働き方を変えるには最初はこうした強制力も必要ではないかと感じています。あわせて「なぜこういったことに取り組む必要があるのか」を社長自ら事あるごとに社員に語りかけました。「時間は自分でコントロールするもの」という意識を徹底的に浸透させ、「時間を意識して仕事をする」ことが社員にも身に付いたのではないかと思います。
年休取得の促進については、証券業界にはもともと休む文化があまりありませんでした。当社の年休取得率も非常に低いものでしたが、夏休みのほかに半期に最低3日は休むようにしました。こちらも毎月チェックして社員が休んでいない部署には連絡するといった作業を地道に繰り返しました。その結果、1年間で20%ほど有給消化率が上がりました。
2008年にはワーク・ライフ・バランス推進委員会を立ち上げ、さまざまな施策の検討を行いました。この委員会の立ち上げ時にCEOの鈴木がCWO(Chief work-life-balance Officer)に就任し、委員長も務めています。人事担当役員のほか、女性役員、人事部長、各部室店長も毎回参加し、さまざまな議論をしています。私の所属するワーク・ライフ・バランス推進課が事務局を務め、現在兼務も含めて9名で運営しています。
家族にもいい会社と思ってもらう
8月には全国の支店で一斉に家族の職場訪問を開催しました。子どもや配偶者だけではなく、両親や兄弟、祖父母も招待しています。家族が会社や仕事を理解してくれれば、毎朝、会社に向かう社員をあたたかく送り出してくれるのではないかと思います。社員一人ひとりのモチベーションを最大化するためには、本人だけではなくて、家族など社員を取り巻く環境も含めて、いい会社だと思ってもらえることが大事なのではないかと考えています。