慶大生が「性的同意」ハンドブックを作った理由 キャンパス内で起こっている性暴力を問題視

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このほか、両団体はそれぞれイベントや勉強会などを実施し、インスタグラムやツイッターで発信を続けている。佐久川氏は、「今年度の目標は、3つ掲げています。1つ目は、メンバー内で勉強会をたくさんすること。2つ目が新入生を対象にした性暴力のガイダンスを今年度中に実施すること。3つ目は他の学生団体への啓発活動の実施。その一例として、サークルなどに対して、性暴力に関する誓約書と活動計画の義務付けを求めることがあります」と話す。

2019年5月に行った「キャンパスにおける性犯罪の防止に取り組む慶應義塾大学有志の声明」という署名活動では890人分が集まり、慶應大学塾長などに提出している。大学側を大きく動かすには至らなかったが、2回目に行った「セクハラを防止できるキャンパスを」と求めた署名活動では、学生自治会の全塾協議会傘下の各学生団体に、セクハラを含む性暴力防止のための誓約書と活動計画の義務付けがなされるなどの成果が上がっている。

ボイス・アップ・ジャパン慶應支部は、セックスワーカーの現状を当事者から聞くイベントを2020年7月18日に実施したところ、150人近くが参加するなどの成果をあげている。学生たちの活動は、少しずつだが着実に実を結んでいる。

留学先で性教育を学んだ

こうした活動を始めた動機を、佐久川氏は性暴力のキャンパス内での蔓延を伝えることに加え、学生たちがあまりにもお互いの性に関して知らないなど性知識の不足を挙げる。

高校時代にカナダへ留学した佐久川氏は、「高校でコンドームのつけ方を、器具を使って練習する、ピルの効果や買えるスーパーについても教わるなどしました。レイプされたらどこへ相談するか、緊急避妊用のアフターピルの説明などを受けています。性について学ぶのは当たり前、という雰囲気でした」と話す。

佐保田氏は国際基督教大学高等学校で、やはりコンドームのつけ方を習うなどしている。出井氏は高校時代に『82年生まれ、キム・ジヨン』を読み、フェミニズムを自主的に学んだ。セイフ・キャンパス所属で理工学部3年生の鈴木稜氏は、女子比率が圧倒的に高い高校出身ということもあり、ほかの同世代の男性と性意識に温度差を感じる機会が多いという。取材に応じた4人はそれぞれ、ジェンダーやセクシュアリティの知識が多く意識が高い。

「断り切れずにセックスに応じてしんどくなって別れる」「女性をモノ扱いする」といった性暴力や性差別がまかり通っていることへの違和感が、彼らを活動へと向かわせた。では、一般的な大学生はどのような性意識を持っているのだろうか。そして性意識が低いと、どのような問題につながるのだろうか。

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