経験と勘の「理由なき人事」が会社から消える日

若い世代にはもうそれでは納得できない

「経験と勘」の人事に頼りがちだった企業にも、合理的に変えていこうという機運が高まっています(写真:EKAKI/PIXTA)

企業の人事部門でもDXの取り組みが進み始めました。これまで「経験や勘」に頼りがちだった異動や育成などを合理的に変えていこうという機運が高まっているのです。

しかし、長くやってきた慣習を変えるのはそう簡単ではありません。例えば、関西に新たな拠点を立ち上げることになった場合。適任者は誰がいいか? 多くの会社ではこれまで、人事異動を考えるときに断片的な情報や印象で「ならば〇〇さんを抜擢しよう」と決まりがちでした。これが「経験と勘」の人事。

退職を考えるきっかけの半数が「異動」

筆者も前職のリクルートで経営幹部をしていた際、経験と勘に頼った人事をしていた気がします。当時、将来のためになるはず……と、管理職向けに経営者を招いた勉強会を開催しましたが、目的は漠然としたものでした。本人が5年以上前に「営業をやってみたい」と話していたというだけの記憶を頼りに、優秀なエンジニア職を営業部門に異動したこともありました。今思えば乱暴な人事でしたが、当時はどこでも同じようなものだったのです。

この連載の一覧はこちら

これがつい最近まで平然と長く続いてきました。人事以外の部門では経験と勘から脱却した手法が当たり前になりつつあるなかで、変わらなかったのです。そんな頑強な慣習に楔が打たれて「人事を合理的に行うべき」という機運が出てきました。

この急激な機運は、何が要因なのか? 社員による突き上げが大きいように思えます。近年、会社が示した人事に対し、「納得できないので断ります」と異動を辞退する社員が増加。経験と勘の人事に不満を抱き、退職に至るケースも増えました。各種アンケートでも異動が退職のきっかけになると考える人が半数を超えています。

異動の辞令に対して「理由を説明してください」と切り出す若手社員も急増しています。ところが、会社側はというと、合理的な説明ができない。こうして「納得できない」「異動はできない」「会社を辞めます」となり、困る上司の声を聞くようになりました。

自分の若手社員時代ならありえない……と思いつつも、退職者が出れば、上司自身の査定にも影響が出てしまいますから、対策を考える必要が出てきます。上司1人の問題ではなく会社として取り組まないと大変なことになりそうな状況とも言えます。

次ページ退職防止や対立の回避は会社にとっても重要
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • CSR企業総覧
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • 日本野球の今そこにある危機
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
無神経すぎる人に「ちょっとだけ言い返す」技術
無神経すぎる人に「ちょっとだけ言い返す」技術
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
人材戦略から儲けのからくり<br>まで コンサル全解明

人材の争奪戦が過熱し、年収水準もうなぎ登りに。デジタル化を背景にコンサルティング業界は空前の活況を呈しています。本特集ではコンサル業界の動向やビジネスモデルを徹底解説。コンサル会社を賢く選び、上手に活用していくノウハウを紹介します。

東洋経済education×ICT